敵基地攻撃能力、早急に保有の検討開始を
中国や北朝鮮の軍事的脅威の高まりを受け、敵基地攻撃能力の保有を求める声が高まってきた。中国の南シナ海の島嶼(とうしょ)の占拠・軍事基地化、北朝鮮の核武装努力の進展に対して、国連は全く無力である。一方、「世界の警察官」だった米国も、その役割を果たす力も意思も減退しつつある。この点を考えれば、早急に保有の検討を開始すべきである。
中朝両国の脅威高まる
現在の国際社会では、核戦力のみならず通常戦力も破壊力が格段に巨大化している。このため、攻撃を受けてから反撃するのではなく、未然に抑止することが極めて重要になっている。これは非核国家の常識だが、核保有の軍事大国についても言えることである。
ここで承知しておくべきは、攻撃力なき防衛力は抑止機能を持たない点である。英語の「抑止」の表現は恐怖を表すラテン語に接頭語の「de」を付けており、相手を脅かすことによって自己への行動を抑制させる意味である。仮想敵国に恐怖心を与えないような防衛力、つまり攻撃力を保有しない防衛力は、抑止力を発生しない。
それにもかかわらず、わが国では「専守防衛」策と称して、自衛隊創設以来、攻撃力を保有せず、攻撃面では専ら米国に依存してきた。これは軍事理論面での検討を加えた結果ではない。55年体制下で非武装中立を唱える社会党などに対する国会答弁を集約したものにすぎない。少なくとも冷戦終結後に見直すべきだったのだ。
米国の国力、軍事力の相対的低下など冷戦終結後の国際社会構造の変化、中国の勃興、北朝鮮の核武装努力の進展など北東アジア情勢の急変によって、冷戦下におけるように米国の軍事力に全面的に依存できる状況はなくなりつつある。
オバマ米大統領の核先制不使用宣言の検討、米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏による日本などの安保条約タダ乗り論は、こうした中で出てきたものである。米国世論の背景を持つものだけに、ある日突然、「核の傘」が閉じられたり、日米安保条約が解消されたりする事態がないとは言えない情勢になってきているのだ。
敵基地攻撃能力の保有については「憲法違反論」を唱える向きがある。この点については、昭和31年に鳩山一郎首相の「自衛の範囲内」(船田中防衛庁長官代読)との答弁がある。
自衛権は前憲法的概念であり、憲法によって否定することはできない。このため、「国際武力紛争法(戦時国際法)」上でも容認されている。
戦闘機に爆撃能力を
敵基地攻撃能力の整備については、とりあえずF15戦闘機の火器管制装置を、韓国のようにボマー(爆撃)能力を持つものに取り換えるべきだろう。それとともに、レーザー誘導空対地ミサイルのほか「レーダー(電波)ホーミング・ミサイル」の導入が不可欠だ。
中長期的には、パーシングⅡクラスの中距離弾道ミサイルの導入も必要になろう。独裁国家は権力機関が集中しているので、通常弾薬でも所期の効果を上げ得る。