対中政策での日米連携強化を
日本、中国、韓国を歴訪中のバイデン米副大統領は、中国の習近平国家主席と会談した。バイデン氏は、中国が沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海上空に防空識別圏を一方的に設定したことを容認しない立場を示し、「深い懸念」を表明した。
中国のこうした行為は見過ごすことのできない暴挙だ。対中政策での日米の連携強化が望まれる。
日米間で微妙なずれも
これに先立ち、バイデン氏は安倍晋三首相との会談で「中国の力による一方的な現状変更の試みを黙認せず、引き続き緊密に連携して対応していく」ことで一致した。日米が結束して中国に強い警告を発したのは極めて適切である。
オバマ米政権が毅然(きぜん)とした態度を取ったことも歓迎される。米政府は戦略爆撃機B52を中国が設定した防空識別圏内に飛ばし、容認しない姿勢を明確に示した。
防空識別圏は領空の外側に設定され、圏内に不審な戦闘機などが入った際に緊急発進(スクランブル)を行うかどうかの基準になる。昨年9月の日本政府による尖閣国有化を受け、尖閣上空などでは、領有権を主張しようとする中国機が日本の防空識別圏に入り、航空自衛隊機が緊急発進するケースが相次いでいた。
習氏はバイデン氏に対し、防空識別圏や域内の領土紛争に関して「中国の原則的な立場」を繰り返したという。中国の防空識別圏設定には、尖閣問題で安倍政権の軟化姿勢を引き出そうとする思惑も見え隠れする。しかし、こうした行為は不測の事態を招きかねない。すぐに撤回すべきだ。
問題は日米間に微妙なずれがあることだ。安倍政権は、圏内を飛行する日本の民間機について、各航空会社に中国当局への飛行計画の事前提出を中止するよう要請した。
一方、米政府は自国の民間航空会社の事前提出を容認しており、日米間の立場の違いが表面化している。ユナイテッド、アメリカン、デルタの米3社はすでに事前提出に応じている。日米の足並みの乱れは中国に付け入る隙を与えるだけだ。
オバマ大統領は10月、国内問題を理由にアジア太平洋経済協力会議(APEC)出席を含むアジア歴訪を中止し、アジア軽視の傾向があるのではないかと懸念された。中国の防空識別圏設定には、米国の出方を見極める思惑もあったとみられる。
安倍首相はバイデン氏との会談の冒頭で「(副大統領の)来日によって、日米の同盟関係をより一層緊密なものに強化したい」と強調。バイデン氏は「日米同盟はわれわれの安全の礎だ。オバマ大統領は、首相が短期間のうちに日米同盟の強化に実績を上げたことに感謝している」と述べた。
日米安保が抑止力の核
対中政策で今必要なのは、日米の連携強化だ。日米安保体制によって日本と米国とが強く結ばれていることが対中抑止力の核となっていることを忘れてはならない。
中国の防空識別圏設定を機に、日米両国は一層の同盟強化に努めるべきだ。
(12月6日付社説)