リオ五輪開幕、世界中の人々に最高の感動を
日本からは地球の真裏に当たるリオデジャネイロ(ブラジル)で5日(日本時間6日朝)の開会式から17日間の日程で、第31回夏季オリンピック競技大会が行われる。200カ国以上、1万人以上の選手が五輪旗と聖火の下で栄冠を競う4年に1度の平和の祭典は、世界中を沸かせてきた。日本からは337人が、南米では初開催の記念すべきリオ五輪に参加する。
ルセフ大統領が職務停止
だが、現地からは世界最大のスポーツ祭典が開幕する盛り上がりが伝わってこない。このことは現地メディアが伝える先月中旬の世論調査にも表れている。リオ五輪が決定した頃のブラジル国民の開催支持は8割超だったのが、今は4割に落ち込み、反対の方が5割となって逆転している。巨額な開催経費が、不況が続く今は国民には重荷と感じられるのであろう。
リオ五輪は内外に問題を抱えるブラジルで、不安の多い開幕を迎える。過去最悪と言われる経済不振で治安も悪化、ジカ熱問題が不安を掻(か)き立てているのに加え、予算の不正執行疑惑などで弾劾されたルセフ大統領が職務停止となったことをめぐり政権中枢でゴタゴタするという異常な国内情勢下にある。
さらに、国外からの深刻な問題もある。一つは五輪はテロの格好の標的となることだ。テロに襲われたミュンヘン五輪(1972年)の悪夢を思い起こし、今は世界中で無差別テロに狂奔する過激派組織「イスラム国」(IS)の存在を前に、テロ防止に万全を期すことが求められる。昨年11月のパリ同時テロの後、ISがインターネット上で「ブラジルよ、次はおまえの番だ」と脅したと伝えられていることを軽視してはならない。
ブラジル治安当局は米中央情報局(CIA)などとの綿密な連携の下で、テロを封じ込めてもらいたい。これを克服すれば、いろいろと問題があったとしてもリオ五輪は及第点としていいほどの課題である。
もう一つはロシアの国ぐるみドーピング問題に関する国際オリンピック委員会(IОC)の対応が、露選手のリオ五輪出場の是非を各国際競技団体(IF)に丸投げして自らの判断を回避したことだ。世界反ドーピング機関(WADA)は、ロシアのドーピング汚染がスポーツ省次官主導の悪質なものと認定した。しかも、発端となった陸上競技だけでなく他の広範な競技にも広がっていたのである。
このため、WADAはロシア選手団の全面排除をIОCなどに勧告したが、受け入れられなかった。これで五輪の公平・公正を守る責任を果たせるのかという批判が高まっている。
ブラジル社会に勇気を
内外でさまざまな問題が噴出し、選手村でも宿舎の水漏れなどの設備トラブル続発が伝えられる。それでも、神聖な競技の場は最良の環境を整え、選手には全力、ベストを尽くしたひたむきなプレー、諦めない闘志、美しい演技などを見せることで世界中の人々にスポーツが発現できる最高の感動を与え、子供たちに夢と希