自動車運転死傷行為処罰法が成立、悲惨な事故を減少させよ


 悪質な運転による死傷事故に適用する罰則を強化する自動車運転死傷行為処罰法が、このほど成立した。来年5月までに施行される。

 被害者遺族らの声を受けて制定されたものだ。悲惨な事故を減少させなければならない。

 緩和された適用要件

 同法は、飲酒や薬物使用、特定の病気の影響による死亡事故を懲役15年以下、負傷事故を同12年以下とする罰則の新設が柱となっている。

 現行の危険運転致死傷罪(懲役20年以下)を飲酒や薬物使用の影響による死傷事故に適用するには、「正常な運転が困難な状態」であったことを立証する必要がある。

 だが、要件が厳しいため、刑罰がより軽い自動車運転過失致死傷罪(同7年以下)に問われるケースが多かった。昨年4月に京都府亀岡市で起きた、集団登校中の小学生ら10人が死傷した事故をきっかけに厳罰化を求める声が高まっていた。

 この事故では、無免許運転をしていた無職少年の乗った軽自動車が、集団登校中の小学生の列に突っ込み、児童2人と保護者の妊婦1人が死亡、7人が重軽傷を負った。事故時に少年は連日の夜遊びによる寝不足で居眠り運転をしていたが、危険運転致死傷罪に問うことはできなかった。

 こうした悲惨な事故を防ぐには、厳罰化が欠かせない。新たな罰則は、要件を「正常な運転に支障が生じる恐れがある状態」に緩和。無免許で死傷事故を起こした場合、より重い刑を科すことができるようにする。飲酒運転で死傷事故を起こし、飲酒の事実を隠すために逃走するなどの行為を懲役12年以下とする罰則も新たに設ける。

 さらに「運転に支障を及ぼす恐れがある病気」の影響による死傷事故にも適用する。対象となる病気は政令で定められ、統合失調症やてんかんなどが想定されている。これは、2011年4月に栃木県鹿沼市でてんかんの持病があった運転手のクレーン車が歩道に突っ込み、小学生6人が死亡した事故を受けたものだ。

 悪質な運転に関して、厳罰化の流れが強まっている。01年12月には、危険運転致死傷罪が新設された。

 飲酒運転は07年9月、それまでの「3年以下の懲役」から「5年以下」に引き上げられた。この時、車両を提供した者も「5年以下」、飲酒を勧めたり、同乗したりした者も「3年以下」と併せて決められた。

 昨年の交通事故死者数は4411人で、前年より201人(4・4%)減った。12年連続の減少で、過去最悪だった1970年の1万6765人に比べ、4分の1近くまで減った。警察庁は、減少が続いている理由について、飲酒や最高速度違反といった悪質な運転による事故の減少やシートベルト着用率の向上などと分析している。

 ルール厳守を心掛けよう

 厳罰化が悲惨な事故の減少に効果を上げていることは間違いない。

 さらなる法整備とともに、運転手が交通ルール厳守を心掛けることが一層の減少につながるはずだ。

(12月4日付社説)