高浜原発20年延長、粛々と再稼働準備進めよ


 原子力規制委員会は、運転開始から40年を超えた関西電力高浜原発1、2号機(福井県高浜町)について、設備や機器などの評価や対策が実施されているとして、20年の運転期間延長を認可した。関電は今後3年ほどかけ、安全対策や住民らの理解を得るための取り組みなど、再稼働の準備を整えていく。粛々と進めてほしい。

 政府目標達成に必須

 今回、規制委は関電が実施した特別点検をもとに、今後20年間の経年劣化の進み方や対策などを検討。関電側は、原子炉圧力容器など材質がもろくなる重要機器の劣化度合いは、今後10年以内に原子炉内にある同じ材質の試験片を使って確認すると説明した。また延長期間中に強度や性能が基準以下に劣化すると予測された電気ケーブルや蒸気系配管の一部は、監視を強化し必要に応じて交換するなどとした計画を示し、規制委は妥当と判断した。

 原子炉等規制法で原則40年とされている運転期間の延長認可は初めて。1号機は2034年11月、2号機は35年11月まで運転できる。

 機械や設備などは使用しているうちに想定外の損傷などが発生することがある。これを予測したり、予防したりするために構造健全性評価工学による手法が応用されている。関電幹部は認可に対し「40年を超えて設備が大きく変わるわけではない。これまで通り、きめ細かな点検を継続することが大事だ」と安全性追求の姿勢を示した。日々進歩する学問や技術なども動員し、今後も安全性の確保に努めてほしい。

 延長を認めた規制委の今回の判断は、政府が昨年示した「30年の電源構成で原発比率は20~22%」との目標達成のためにも重要な意味を持つ。16年以降の10年間に運転40年を迎える原発は全国で16基ある。

 いわゆる「40年ルール」が杓子定規に適用され廃炉に向かうならば、政府目標は絵に描いた餅にすぎなくなる。安全性が確認された原発の延長稼働は必要不可欠だ。

 規制委の田中俊一委員長は「あくまで科学的に安全上問題ないか判断するのがわれわれのミッションだ」と述べており、これを機に他原発の運転延長審査申請が続くことを期待したい。

 一方、延長審査制度の仕組みの不合理な点も目につく。現行では、電力会社は原発運転開始から満40年を迎える1年3カ月~1年前にしか延長申請できない。そのため、それを受けての規制委の審査期間も最長で1年3カ月に限られ、期間内に終了しなければ、その時点で審査は打ち切られる。事業者側が、事前に完璧に近い申請準備を迫られる一発勝負のような審査は改善が必要だ。

 長期運転のモデルに

 高浜原発は地元の経済にも影響を与えている。福井県の核燃料税の収入は10年度74億円あったが、全基停止していた14年度は60億円に減少した。また原発関連産業をはじめ、土木・建築分野の雇用も縮小を余儀なくされている。

 高浜原発1、2号機の延長が原発の長期運転のモデルとなることを期待したい。