ニホンウナギ、資源管理の取り組み強化を


 9月下旬から南アフリカで開かれるワシントン条約の締約国会議で、ニホンウナギの商業取引が規制されることはなくなった。条約事務局がウナギについての議案提出がなかったと公表したためだ。

 だがニホンウナギは絶滅が危惧されており、次回の会議で規制される可能性は残る。資源管理の取り組みを強化しなければならない。

乱獲の影響で大幅に減少

 日本でウナギを食べるようになったのは大変古く、『万葉集』にはウナギが登場する大伴家持の歌が載っている。「土用の丑の日」は江戸時代からの習慣で、日本の食文化には欠かせない食材だ。

 ニホンウナギはグアム島に近い深海で産卵。孵化(ふか)した後に海流に乗って日本にたどり着く。稚魚(シラスウナギ)は養殖に使われるが、乱獲の影響で近年、大幅に減少した。

 シラスウナギの国内漁獲量は、1960年代初めには年間200㌧を超えていたが、近年は10㌧前後まで落ち込んでいる。2014年6月には国際自然保護連合(IUCN)が絶滅危惧種に指定した。

 ニホンウナギは海外からの輸入も多い。ワシントン条約で商業取引が規制されれば、かば焼きやうな丼の高騰など日本の食卓にも影響が及びかねず、今後も資源回復に努めなければならない。

 14年9月に日本、韓国、中国と台湾は、シラスウナギを養殖池に入れる量(池入れ量)を前年比2割減とする初の国際規制を導入することで合意した。これに基づき、日本は15年漁期(14年11月~15年10月)の池入れ量を21・6㌧に制限。不漁による輸入減もあり、実際は枠内の18・3㌧にとどまった。

 さらに4カ国・地域は15年2月から条約などの締結に向けた検討を始めた。しかし、中国は法的拘束力を持たせるのは困難と主張している。

 この協議に参加していない香港からもシラスウナギが日本に大量に輸入されている。香港で大規模なウナギ漁は行われないので、実際の産地は台湾や中国の可能性が高い。資源管理強化に向け、実効性ある国際枠組みの構築が求められる。

 シラスウナギの減少は乱獲のほか、親魚が生息する河川環境の悪化も原因とされている。環境省は資源回復のため、河川の環境保全の指針を策定する方針だ。ウナギが身を隠す場所を確保し、海と川とを行き来しやすいようにしてウナギの生息地を広げる狙いがある。

 資源に悪影響を与えないためには「完全養殖」によるシラスウナギの量産化実現も重要だ。完全養殖は水産総合研究センターが10年に世界で初めて成功した。政府は16年度までに完全養殖で1万尾生産するとの目標を掲げている。

完全養殖研究を軌道に

 しかし、達成は困難な情勢となっている。完全養殖では、孵化してからシラスウナギになるまで天然ウナギの2倍近い300日程度かかるケースが多く、生き残る確率も極めて低い。日本の食文化を守り、後世に伝えていくためにも研究開発を軌道に乗せてほしい。