警察は暴力団の弱体化に全力挙げよ
指定暴力団山口組(神戸市)から分裂した神戸山口組(兵庫県淡路市)について、兵庫県公安委員会は暴力団対策法に基づく指定暴力団とした。
両団体による抗争が全国各地で続いている。警察は弱体化に全力を挙げるべきだ。
神戸山口組が指定受ける
指定暴力団に対しては、金品要求などへの中止命令のほか、抗争時に組事務所の使用制限を命じることも可能になる。昨年8月の分裂から、わずか8カ月足らずでの指定は極めて異例のことだ。
今年2月中旬以降、山口組と神戸山口組の傘下組員らによる事件やトラブルが頻発したためだ。組事務所近くの学校が通学路を変更したケースもある。住民の安全が脅かされており、迅速な指定は当然だ。
1980年代には山口組と分裂した一和会との間で「山一抗争」が生じ、暴力団関係者25人が死亡したほか住民を含む70人が負傷した。今回は住民の巻き添えを何としても防がなければならない。
指定暴力団とすることで、警戒区域に立ち入った組員を中止命令なしで逮捕できる「特定抗争指定暴力団」への指定もできるようになる。警察は両団体の弱体化に向けて総力を結集すべきだ。
両団体が対立抗争状態にあると認定された3月7日以降、事務所への発砲や火炎瓶投擲(とうてき)など抗争とみられる事件は12都道府県で20件以上発生している。
特に目立つのが、トラックなど大型車による組事務所への突入だ。拳銃を使うよりも罪が軽く、相手に与える経済的打撃が大きいという。盗難車が使われるケースも多いため、特に大型車については警戒を強める必要がある。
神戸山口組は熊本地震の被災者に食料などを配布する支援活動を展開している。勢力拡大や復興事業参入を狙い、イメージアップにつなげる思惑があるのだろう。
支援物資が被災者に十分に行き届いていない中、暴力団が提供する食料を受け取るなとは言えないが、このことで警戒を解くことがあってはならない。特に熊本県に近い福岡県では、元漁協組合長が暴力団員に射殺されるなど、暴力団の関与する事件が相次いだ。
東日本大震災後にも、被災者対象の貸付制度を悪用した詐欺や違法な労働者派遣で関係者が摘発されるなど暴力団の関わりがあった。今回の地震でも、復興事業をめぐって山口組と神戸山口組の抗争が激化する恐れがある。警察は十分に注意を払う必要がある。
一方、分裂を機に社会復帰を望む離脱者も出ている。こうした人たちが再出発できるようサポートすることも暴力団の弱体化につながろう。
排除の機運を高めたい
こうした中、プロ野球巨人4投手の野球賭博やバドミントン選手の違法カジノ店での賭博など、スポーツ界で暴力団を利しかねない不祥事があったのは残念だ。
暴力団排除の機運を高めるには、スポーツ界だけでなく、私たち一人ひとりが自分の行動を律する必要がある。