日米韓首脳会談、対北朝鮮で結束欠かせない


 米ワシントンでの核安全保障サミットに出席するため訪米した安倍晋三首相は、オバマ米大統領、朴槿恵韓国大統領との首脳会談を行い、核実験に続く長距離弾道ミサイルや中・短距離ミサイルの発射など武力挑発をエスカレートさせている北朝鮮への対応をめぐり連携強化を確認した。東アジアの安全を守るには日米韓3カ国の結束が欠かせない。

 「慰安婦」合意を確認

 会談で安倍首相は、北朝鮮の挑発行為に歯止めを掛けるため3カ国が安全保障と防衛協力でより緊密に連携していくべきだと主張した。3カ国の首脳会談は2014年3月以来だが、歴史認識問題などで日韓関係がぎくしゃくしていた前回とは比較にならないほど、和やかな雰囲気だったという。その意味で今回の会談は「連携の復元」という側面もあり、北朝鮮の狙いが日米韓の分断にあることを考えると意義は大きい。

 安倍首相は安保・防衛協力について「目に見える形で具体的に進める」重要性に触れた。先月末の安全保障関連法の施行を受け、日本がこれまで以上に積極的に参加できるようになったことは日米同盟の発展と言える。韓国国内の反日世論が壁となっている日韓防衛協力も、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の早期締結などを目指し具体化していくことが望ましい。

 北朝鮮の最高指導者・金正恩第1書記は来月、36年ぶりの党大会を開く予定で、これを体制固めに利用するとみられる。武力挑発は内部引き締めにも有効であることから、今後も引き続きさまざまな手段で周辺国を脅かす恐れがある。3カ国の安保・防衛協力を弱めてしまうような懸案や火種は極力、表面化させないことが重要だ。

 安倍首相は朴大統領との日韓首脳会談にも臨み、いわゆる従軍慰安婦問題をめぐる昨年末の日韓合意を着実に履行していくことを確認した。北朝鮮の脅威が増す厳しい現実の中、何より未来志向に踏み出した日韓関係を「後戻り」させない努力が両政府に求められる。自国のナショナリズム(民族主義)を刺激する傾向に走った両国マスコミにもその責任の一端があることを肝に銘じなければなるまい。

 安倍首相は日米韓首脳会談で北朝鮮による日本人拉致問題の早期解決を目指す立場を改めて強調し、情報共有などで協力を求めたという。特にヒューミント(人を介した情報収集活動)に強い韓国に期待したい。

 東シナ海や南シナ海での中国による海洋進出問題では、日米が事態の深刻さを受け連携強化の重要性を確認した。朴大統領は韓半島統一などをにらみ対中接近路線を取っているが、地域安保では事実上、米中両国の板挟み状態にある。在韓米軍への高高度防衛ミサイル(THAAD)配備では中国に配慮する意向はないとも言われるが、日米韓連携の重要性に鑑みた政策決定が肝要だ。

 中国動かすにも連携を

 国連安保理によるかつてない強力な対北制裁決議に当初、慎重姿勢を崩さなかったのが中国だ。日米韓の連携は、制裁が効力を発揮するか否かの鍵を握る中国を動かすにも欠かせない。