日本版NSC創設法が成立、秘密保護法が欠かせない
国家安全保障会議(日本版NSC)創設法が成立した。今後の課題は、いかに新機関を国家の安全保障確保に活用していくかにある。 これまでも同趣旨で設置されたものの全く機能しなかった、国防会議、安全保障会議の二の舞いにならないようにすべきだ。従来の機関の欠陥を反省することが新機関発足に当たって肝要である。
第2次大戦で情報戦完敗
第1次世界大戦は総力戦となり、国家の保有する全ての機能を動員して戦われた。日本は本格的に参戦しなかったため、総力戦体制の構築で欧米諸国に後れをとった。中でも、行政府への権力の集中と情報戦能力の強化をめぐっては、大きく後れを取った。
第2次大戦で、ルーズベルト米大統領、チャーチル英首相は、スターリン・ソ連首相やヒットラー独総統に勝るとも劣らない権限を行使したが、東条英機首相の権限は極めて弱体だった。旧憲法下で戒厳令があったが、総力戦時代に対応した非常事態法制の整備はなされなかった。新機関はこの不備を補う使命がある。
いまひとつ大きく立ち後れたのは情報戦能力の整備である。電波機器の発達で情報戦の様相は一変したが、対応は十分ではなかった。政府は諜報機関を保有していなかった。
急遽(きゅうきょ)、内閣情報局が設立されたが、分析官、情報要員の養成が間に合わないまま大戦に突入。このため、対米情報戦は終始完敗だった。
国防会議、安全保障会議が機能しなかったのは、事務局に少数の要員が各省庁から派遣されていただけであり、各省庁の情報資料を取得する権限もなかったからだ。肝心な情報分析や政策立案などについての能力は皆無だった。
この点、新機関は情報の集約など欠陥はかなり是正されている。ただ、情報分析、政策立案の点では、行政官僚の寄せ集めであり、当面は大きな期待はできないであろう。
一方、各省庁の収集情報や諸外国からの情報だけでは、厳しい国際社会で生き抜くことはできない。独ソ不可侵条約締結時の平沼騏一郎首相のように「複雑怪奇なる新情勢」に驚愕(きょうがく)する状況は、現在も続いている。諸外国のような諜報(ちょうほう)機関を設置しなければ、新機関も有効に運営できないであろう。
情報戦といった場合、情報収集、活用も重要だが、それとともに国家の存立を危うくするような情報の漏洩(ろうえい)を防ぐことも不可欠である。ところが、日本には個人情報保護法はあるが、秘密保護法がない。
欧米主要諸国は近代以降、秘密保護法を保有していたが、大戦後に個人情報保護法を制定した。両法は矛盾しておらず、言論の自由も確保されている。
欧米諸国の状況踏まえよ
「言論の自由が侵害される」とか「暗黒の時代が来る」といった、ためにする議論が流布している。
特定秘密保護法案は衆院を通過して参院での審議が開始された。今国会で成立する見通しだが、参院では欧米の主要諸国の状況を踏まえて議論すべきだ。
(11月28日付社説)