核燃料取り出し開始、政府は十分な廃炉支援を
東京電力は、福島第1原発4号機原子炉建屋の使用済み燃料プールで、核燃料の取り出し作業を始めた。 30~40年かかるとされる廃炉作業の最初の節目となる。廃炉を実現するには、政府の十分な支援が求められる。
工程表の第2期に移行
4号機のプールには未使用の燃料202体と使用済み燃料1331体が保管されていたが、このうち未使用燃料22体がすでに取り出され、別の建屋の共用プールに収容された。2014年末までに全ての燃料を移送する予定だ。
プール内には、事故時の原子炉建屋の水素爆発で飛散した細かいがれきが残っている。燃料が引っ掛かったり、途中で落ちたりするトラブルに十分な備えが必要だ。
今後は、強い放射線と熱を放つ使用済み燃料も取り出されるようになる。大破した原子炉建屋での取り出し作業は前例がなく、困難も予想される。安全第一で進めてほしい。
事故当時4号機は定期検査中で、原子炉内の燃料はプールに移されていた。このため1~3号機のような炉心溶融(メルトダウン)は起きなかったが、大破した建屋内に大量の燃料が置かれていることが不安視されていた。
政府と東電は廃炉工程表で、プールの燃料取り出し開始までを第1期、1~3号機原子炉内で溶け落ちた燃料の取り出し開始までを第2期、廃炉完了までを第3期と設定。4号機の燃料取り出しで工程表は第2期に移行した。
廃炉作業にはさまざまな課題が残っている。メルトダウンを起こした1~3号機の原子炉建屋内は放射線量が極めて高く、人が近づけない状況だ。1~3号機の燃料取り出しに生かすために、4号機建屋での作業をしっかりと検証しなければならない。また、東電は5、6号機を廃炉にし、1~4号機の廃炉に向けた研究・訓練施設に転用することを検討している。
しかし、溶け出した燃料の取り出しはさらに難しい。取り出すには損傷した箇所をふさぎ、原子炉に水を満たして強い放射線を遮る必要がある。だが、原子炉を収める格納容器は極めて放射線量が高く、原子炉内の様子はほとんど分かっていない。状況把握のため投入を検討しているロボットは技術開発の段階にとどまっている。
また、溶融燃料を冷やすため注ぎ込んだ水は地下に流れ出て、高濃度の汚染水としてたまっている。東電は放射性物質を大幅に減らせる装置「アルプス」の試運転を行っているが、本格稼働はまだ先だ。
東電は資金や能力面で限界にきている。廃炉を完了させるには、政府が前面に出なければならない。
英知結集し作業進めよ
工程表では、15年度上半期から3号機、17年度中に1、2号機プールで燃料取り出しを始め、20年度上半期には1、2号機の溶融燃料取り出しを開始する予定だ。
廃炉完了までの期間は長い。安全に配慮しつつ、工程表通りに作業を進めるため、政府は英知を結集すべきだ。
(11月24日付社説)