震災復旧談合、極めて悪質な裏切り行為だ


 東日本大震災で被害を受けた道路などの舗装工事をめぐる談合疑惑は、復興を名目にした悪質極まりないものであり、厳しい処罰を下すべきだ。捜査に当たる東京地検特捜部と公正取引委員会は、事実を徹底的に解明する必要がある。

高速舗装工事で12社

 問題となったのは、東日本高速道路(NEXCO東日本)の東北支社が2011年8~9月に発注した高速道路の復旧工事12件。9路線の工事で受注調整し、道路舗装12社が1件ずつ落札した疑いがある。

 12件の落札率(予定価格に対する落札額の割合)の平均は94・77%で、震災前より10ポイント以上高かった。談合で受注価格をつり上げて利益を確保したとみられている。落札総額は約176億円で、復興予算から約162億円が投入された。

 復興予算は税金によって賄われたものだ。自由競争であれば落札総額はもっと低く抑えられた可能性もある。舗装各社が不当に利益を得たことは、被災地や国民に対する裏切り行為だと言わざるを得ない。

 震災直後は資材や人件費が高騰し、公共工事を落札しても赤字になる恐れがあるため、入札参加者が足りず落札者が決まらない入札不調も多かった。舗装工事に必要なアスファルトの価格も約2割上昇している。受注した企業の関係者からは「復興を急ぐ中で仕方なかった面もある」との声も上がっている。しかし、談合を正当化することはできない。

 事件の背景には、業界の旧態依然とした「なれ合い体質」がある。談合では、仕切り役とされる大手4社が各社の工場に近い工事を割り振ったという。工事に使われる合材は約180度の高温で現場に運ばなければならないので、自社工場からの距離が近いほどコストが削減されるためだ。

 さらに見過ごせないのは、各社が入札前、発注元から談合の情報があると指摘されたため、「不正行為」はないとする誓約書を提出していたことだ。にもかかわらず、実際は談合を行っていたのだから極めて悪質だと言わざるを得ない。

 大手ゼネコンは05年末に「談合決別」を宣言した。しかし、翌年には舗装各社による談合が行われていたという。業界では「談合は必要悪」という考えが根強いとされる。

 談合防止のため、06年1月に施行された改正独占禁止法は、違反企業への課徴金の減免制度を導入した。最初に談合に関与したと申し出れば課徴金が全額免除され、刑事告発対象から外れる。2番目は50%、3番目は30%減額される。

 今回の事件は、この制度を利用した申告によって発覚したとみられている。14年に告発された北陸新幹線の融雪設備工事をめぐる官製談合事件など、制度は摘発に一定の効果を上げていると言える。

不正には高い代償が伴う

 減免制度を使わなかった企業が、株主から課徴金と同額の損害賠償を求められるケースも出ている。

 談合には高い代償が伴うということを周知徹底しなければならない。

(1月26日付社説)