ケネディ駐日大使着任、日米同盟強化の好機生かせ


 米国の新しい駐日大使キャロライン・ケネディ氏が着任した。故ジョン・F・ケネディ元大統領の長女として抜群の知名度と人脈を誇り、オバマ大統領とも近い。

 それだけに米政界や世論への影響力もあり、米側に日本への理解を深めてもらうのにふさわしい人物だといえよう。ケネディ氏着任は日米同盟強化のまたとない好機といえる。政府はフルに活用すべきだ。

 大統領と親しい関係

 天皇陛下にオバマ大統領からの信任状を奉呈するため、ケネディ氏が馬車で皇居に向かった際には、沿道は一目見ようと集まった人々で埋め尽くされた。新大使の日本での人気は高い。

 きょうでケネディ元大統領暗殺から50年を迎える。新大使を乗せた馬車を沿道で見守ったある婦人は「大統領の葬儀のニュース映像に映っていた小さな女の子の姿を思い出す。こんなに立派に成長したとは……。両国関係をさらに深めてほしい」と感想を語ったが、まったく同感だ。ケネディ一家は多くの日本人にとって一種の劇的な感想の対象なのだ。

 ケネディ氏の大使起用の理由として、オバマ大統領といつでも話せる親しい関係にあることが挙げられる。また、過去2回の大統領選でオバマ氏を支持したことへの論功行賞の意味もあろう。しかし、それ以上に米国が掛け替えのない同盟国として日本を重視しているシグナルになる効果が考慮されたとみていい。歓迎される人事だ。

 ワシントンの駐米日本大使公邸での就任祝賀式典で、ケネディ氏は「日本は最も大切な同盟国。日米関係は地域の安定の礎だ。日米同盟を強化するため全力を尽くしたい」と抱負を語った。われわれの新大使への期待は大きい。

 父のケネディ元大統領は第2次世界大戦中、旧日本海軍に撃沈された魚雷艇の艦長として、乗組員を生還させた英雄だ。式典に出席したケリー国務長官はこのことに触れ「大使就任は、日米が過去を乗り越えて未来に進むことを象徴する」と述べた。これを機に日米両国は新しい成熟した関係を築くべきだ。

 中国の軍事的台頭や北朝鮮の核開発などアジア太平洋地域をめぐる情勢は決して平穏とはいえない。とりわけ日中は尖閣諸島(沖縄県石垣市)問題で鋭く対立している。ケネディ氏は米上院の公聴会で、尖閣について「日本の施政権下にあり、日米安全保障条約第5条の適用対象だ」と明言した。米国の防衛義務を確認したもので心強い。

 ケネディ氏は成田空港に到着した際、記者団に「日本と米国は自由、民主主義、法の支配(といった価値観)を共有している。日米同盟は平和で繁栄する世界にとって非常に重要だ」と強調した。

 両国関係の発展を期待

 片時も忘れてならないのは、日米同盟の基盤は共通の価値観であることだ。それが日米と日中関係の根本的な相違点だ。

 日米関係をめぐっては沖縄の米軍普天間飛行場の移設問題が重要な局面を迎えている。ケネディ大使着任で日米関係が原点に立ち返り、発展することを期待したい。

(11月22日付社説)