化血研は解体的出直しで体質改善を


 化学及血清療法研究所(化血研、熊本市)が承認外の方法で血液製剤を製造していた問題で、厚生労働省は医薬品医療機器法(旧薬事法)に基づき、過去最長となる110日間の業務停止命令を出した。

 患者の信頼を裏切った化血研の責任は重い。過去最長となったのは当然だ。

不正の原因は「おごり」

 化血研は1974年から国の承認と異なる方法で血液製剤を製造。98年ごろからは虚偽の製造記録を作成し、国の検査をすり抜ける組織的な隠蔽(いんぺい)工作を続けていた。今のところ健康被害は出ていないが、それはあくまでも結果論で、こうした方法で作れば人体に影響の出る可能性はある。

 化血研の第三者委員会は昨年12月に公表した最終報告書で、不正について「『少々ごまかしても問題ない』という研究者としてのおごりが原因」と指摘した。長年にわたって法令順守の意識が失われていたとすれば極めて深刻だ。

 ただし業務停止命令では、代替品のない血液製剤やワクチン計27製品について、患者への影響を考慮して対象から除外されている。実際、インフルエンザのワクチンが一時品薄となり、医療機関が接種を延期するなどの事態が生じている。このため、実際に出荷停止となるのは8製品にとどまる。やむを得ないが、処分が甘くなったことは否めない。

 塩崎恭久厚労相は「本来なら直ちに許可取り消し処分だ」と憤った。省内では「もはや薬を作る資格はない」という厳しい意見も出た。化血研は重く受け止めるべきだ。

 化血研をめぐっては、感染症法で義務付けられている届け出を行わずに毒性の強いボツリヌス毒素を運搬していたことも発覚している。厚労省は事業譲渡や経営統合なども含めた検討を迫る方針だ。患者の信頼を取り戻すには、解体的出直しによる体質改善しか道はないだろう。

 血液製剤の主要メーカーは、化血研を含めて国内には3社しかない。国は薬害エイズの反省から2003年以降、原料を国内献血として血液の配分方法を決めてきた。利益に結び付きにくいため、新規参入のハードルが高く、こうした寡占状態が不正の一因となった。

 もっとも、製品の安全性確保や安定供給などを考えた場合、すぐに寡占を解消するのは難しいだろう。厚労省は近く、外部有識者を交えた作業部会の初会合を開き、血液製剤とワクチンの製造業界の在り方について議論を始めるが、しばらくは寡占が続くことを前提にした対応が求められる。

 今回の問題に関しては、40年以上にわたって不正を見逃してきた国の責任も大きい。これまで国の薬事行政は「性善説」に立ってきた。2年に1回の検査は書類通りに製造されているかのチェックに重きが置かれ、その書類自体が偽物との考えは毛頭無かったという。

抜き打ち検査の導入を

 また、国の査察は事前通告をした上で実施されていたため、隠蔽を容易にした。抜き打ち検査の導入などで、メーカーへの監視を強化する必要がある。

(1月12日付社説)