夫婦同姓合憲、制度の意義認識する契機に


 「男女平等」や「個人の尊重」をことさら強調する一方で、子の幸せよりも大人の事情を優先する風潮が広まる中、家族制度の意義を改めて考えさせる初めての憲法判断だった。民法の夫婦同姓規定をめぐる訴訟で、最高裁が夫婦とその子供が同一の姓にする意義を積極的に認めたことは画期的とさえ言える。

 子供も利益を受ける

 夫婦同姓を合憲と判断したのは判事15人中10人。その多数意見は、個人の尊重や男女平等だけの観点に偏る一部メディアや左派の学者らの影響を受けることなく、「現行の民法の下でも家族は社会の自然かつ基礎的な集団単位と捉えられている。その家族の呼称を一つに定めることに合理性があり、家族の一員であることを対外的に示す機能がある。子供もその利益を受ける」と明言した。

 家族の一体性、生まれてくる子供の幸福、社会の安定という観点は家族制度の本質に関わっている。それを軽視して民法の規定を変えれば、社会の根幹をなす家族の弱体化につながる。判決次第ではそんな危惧が強まったろう。

 もちろん、個人の尊重は大切だ。原告は、改姓によってアイデンティティーの喪失感を抱くなど不利益を受けたと訴えた。これに対して、判決は「旧姓の通称使用が広まることで緩和される」から「合理性を欠く制度とは認められない」と、現状を見据えた判断を示した。

 女性にだけ離婚後6カ月の再婚禁止期間を設けている規定についても、父子関係を安定させるもの、と意義を明確にした。憲法にある「法の下の平等」を杓子(しゃくし)定規に適用せず、子の幸せを優先させる妥当な判断だ。

 民法の規定では、離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子、再婚から200日経過後であれば現夫の子と推定する。これでは生まれた子供が前夫と現夫のどちらの子とも推定されるケースが出てきて、父子関係をめぐって争いが起きてしまう。再婚禁止期間はそれを防ぐのが目的だから、女性差別に当たらないのは明らか。6カ月となったのは、外見から妊娠が分かるという理由からだと言われる。

 最高裁は今回、医療技術の発達した現在、再婚禁止期間は100日に短縮しても、父子関係の争いを避けることは可能と判断。それを超える80日のみを違憲とした。この判断を受け、政府は民法改正案を来年の通常国会に提出する方針だが、再婚禁止期間の意義を踏まえた改正であることが肝要である。

 同性婚問題に象徴されるように、家族をめぐる論議は近年、時代の変化や海外の動きに乗り遅れるな、家族の多様化を認めるべきだとの主張が強まっている。この傾向を誘導するように、日本の伝統的な家族観に反発する活動家の動きや、一部メディアの一方的な報道が散見されるが、大人の事情を優先し、生まれてくる子の幸福を顧みない風潮が今以上に強まれば、家族制度は崩壊するだろう。

 家族の絆強める議論を

 今回の憲法判断を契機に、家族の絆を強める上で堅持すべき規定と時代の変化の中で改めるべき規定を峻別する冷静な議論が行われることを期待したい。

(12月18日付社説)