文化の日、伝統継承・創造・発信強めよ


 きょうは文化の日。文化は我々の生活とりわけ精神生活の豊かさに直結するとともに、近年は経済力、軍事力、政治力と並ぶ国力の重要な要素として文化力がますます注目されてきている。日本の文化的な状況を改めて見詰める日としたい。

 今年も日本の文化について考えさせられる出来事が多く起きている。中でも、大村智氏のノーベル医学生理学賞、そして梶田隆章氏の同物理学賞の受賞決定は最も明るいニュースだ。

日本への関心高まる

 これで日本の科学分野での受賞は21人に上り、日本の科学教育と研究の水準の高さ、底力を改めて世界に示した。一方、以前から日本の研究環境が必ずしも恵まれたものでないとの指摘もある中で、このような快挙を果たし得た文化的背景に注目する見方を、韓国のメディアなどが示している。

 確かに経済的利益や社会的な栄達よりも、夢や理想を追求する心、職人的な一途な姿勢などが、科学大国、技術大国を築き上げたことは、受賞者の経歴からも言える。日本文化の底流にある、こうした精神風土を大切にしていきたい。

 観光庁によると今年の訪日外国人の数が、9月までに1448万人に達し、過去最高だった去年の1341万人を既に超えた。政府は2020年までに2000万人を目標に掲げているが、それ以前に達成する可能性が出てきた。

 円安が続いていることが大きいが、日本への関心の高まりがベースにあると思われる。日本食やアニメ、漫画などを中心にしたクールジャパンは人気を呼んでいる。

 もちろん日本を訪れた外国人は、東京では浅草に行き、京都や奈良なども人気だ。伝統的な文化への関心は依然として高い。日本文化の強みは、伝統的なものが保存され息づいている一方で、新しいものがどんどん生まれていることだ。漫画、アニメなどでも、伝統文化を素地としたり、題材としたりしているものが少なくない。

 漫画やアニメなどをきっかけに、若い人たちが伝統文化を本格的に知ろうとする現象も起きている。日本刀の美しさに引かれる「刀剣女子」が代表例だろう。伝統と創造のダイナミックな関係を保つためにも伝統文化の保存継承は重要だ。

 「食」をテーマにイタリアで半年間開かれていたミラノ万博では、日本館の人気が一番高く、期間中220万人が来館した。展示も評判となり、行列嫌いのイタリア人を行列させた。

 日本の食や文化の魅力を示す出来事だが、これは「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されるなど、日本食を世界にアピールしてきた努力のたまものだと言える。

関連予算を増やしたい

 しかし、世界の先進国の中で、国家予算に占める文化関連の予算の割合では、日本はまだまだ小さい。12年の実績では0・11%とフランスの1・06%と比べ10分の1程度である。今後さらに予算を増やし、伝統文化の保存・継承、新しい文化の育成、世界への発信をバックアップし、真の文化大国への道を開いていきたい。

(11月3日付社説)