防衛装備庁が発足、求められる予算の効率的使用


 兵器、防衛装備品の研究開発、調達、輸出を一元的に担当する防衛装備庁が発足した。時宜を得た対応である。

 国際情勢が緊迫化しているにもかかわらず、わが国の防衛予算は諸般の事情から大幅な増額を期待できない。このため、少ない予算の効率的使用が求められているからだ。

 開発、調達、輸出を担当

 陸海空自衛隊は相互間の関係より、米軍のカウンターパートとの関係が密接と言われている。これは3自衛隊設立の経緯が反映している。わが国の防衛力は攻撃力が欠落しているため、国家を守るために米軍への依存が不可欠であるからだ。

 しかし、わが国の安全確保のためには、調達面でも3自衛隊の協力が不可欠である。ところが、米陸海空軍の防衛装備は共用できるものでも各軍が独自装備を使っているケースが少なくない。一括・大量注文すれば安くできるにもかかわらず、各軍が個別に似たようなものを調達しているために、コスト高になっている。

 このやり方が3自衛隊にも反映しており、調達費用が割高になっている場合が少なくない。装備庁の発足で3自衛隊の装備を一括注文しやすくなり、経費も節約できる。もっとも、この際に注意すべきは、経費削減を最優先するあまり、陸海空各自衛隊の戦闘次元、内容の違いを無視してはならないことだ。

 一方、わが国の兵器、防衛装備は米国からの調達品が多い。だが、米国から購入する際、米軍の取得価格よりかなり高額のケースが目立つ。

 また、兵器、装備システムには日本製民需品がかなり含まれている。価格の明細を見ると、日本メーカーから直接購入すれば何分の一かで取得できるものもあるという。

 商社員の中には「防衛省の米国からの武器・装備調達は殿様商売」と見る向きもある。調達機能を一元化することで、3自衛隊の調達要員は削減可能である。浮いた経費を、一流商社員並みの交渉能力を持った要員育成に使うべきであろう。

 一方、兵器の研究開発費はうなぎ上りであり、一国だけで新兵器を開発することは困難である。このため、同盟国友好国との共同開発が一般的になっている。ところが、従来は「武器輸出三原則」が「禁輸三原則」と曲解され、輸出のみならず共同研究も阻害されてきた。

 幸い、安倍内閣になって「防衛装備移転三原則」が定められ、共同研究、輸出も制約が緩和された。この面でも、共同研究の実施、輸出先との価格交渉をスムーズにこなせる要員の養成が必要になってくる。

 不正で信頼を失うな

 兵器、装備の調達をめぐっては、過去に汚職、談合、防衛産業との癒着などが頻発した。2006年には旧防衛施設庁の官製談合事件で幹部が逮捕され、これを契機に同庁は解体された。07年には事務方トップの守屋武昌元事務次官が収賄容疑で逮捕された。

 これらの不正は国家安全保障政策への国民の信頼・支持を失わせることになる。装備庁発足を機に、改めて気を引き締めるべきである。

(10月9日付社説)