川内再稼働、新規制基準での意義大きい
九州電力の川内原子力発電所1号機(鹿児島県)が再稼働した。国内の原発が一基も稼働しない状況が約2年間続いていたが、ようやく脱することができた。2013年に導入された新規制基準の下での初の再稼働であり、その意義は大きい。
原発停止で電気料金上昇
同原発は14日にも発送電を再開し、9月上旬に本格的な営業運転を始める。停止してから4年以上経過し、今後も不具合の懸念が残るため、原子力規制委員会は運転状況を厳しく監視する方針という。
13年9月から続いていた「稼働ゼロ」状態の中で、反原発勢力は、その常態化を図ろうと、反対運動を続けてきた。川内1号機の再稼働を、他の原発の再稼働への弾みとしたい。
規制委が策定した新規制基準は、世界で最も厳しいものだ。活断層の調査などから始まり、最大級の地震・津波を想定し、電源の多重化など安全確保のための対策を求めている。
規制委は川内原発の審査の中で、九電が想定する地震の揺れが不十分だとして、当初の540ガルから620ガルへと引き上げさせるなどした。このため、審査申請から再稼働まで約2年を要した。
同じように、このような厳しい基準に沿って審査を行い合格を出した関西電力高浜原発3、4号機(福井県)に対し、福井地裁は4月、事故のリスクを否定できないとして再稼働の差し止めを命じた。
この問題の最前線の専門家の判断に裁判官が異議を唱える異常な司法判断である。思想的な偏向すら疑わせるが、それを後押ししているのが、不可能な「絶対の安全」「ゼロリスク」の幻想である。
東日本大震災以後、電力会社による電気料金の値上げが相次いだ。今年度のエネルギー白書によると、昨年度の全国平均の料金は、家庭用が震災前に比べ25%、産業用は38%上昇した。東京電力福島第1原発事故の影響による原発停止の長期化で火力発電への依存が強まり、輸入燃料のコストが増えたのが一番の原因だ。
火力への依存度は10年度の62%から13年度には88%にまで高まっている。燃料費の増加は年間3・4兆円にも上ると試算されている。原発停止によって、これだけの国富が失われているのである。
家計への影響も小さくないが、一番打撃を受けるのは中小企業だ。ようやく日本経済が再生軌道に乗り出した中で、電気料金の負担増は大きな足かせとなっている。また火力依存の高まりは、温室効果ガス削減の妨げともなっている。
川内1号機以外で新規制基準による審査申請を行った原発のうち、今のところ再稼働の見通しが立っているのは川内2号機と四国電力伊方原発3号機(愛媛県)のみだ。
審査の速度を上げよ
他の原発も審査の速度を上げる必要がある。再稼働が遅れれば、日本経済再生の芽すら摘みかねない。
その認識に立って、政府は国家方針として、原発再稼働の迅速化を強力に推し進めていくべきである。
(8月12日付社説)