防衛白書、中国の脅威詳しく伝えよ


 平成27年版防衛白書が閣議で了承された。

 中国による南シナ海での岩礁埋め立てなどを「高圧的とも言える対応を継続させ、一方的な主張を妥協なく実現しようとする姿勢」と批判した。

ガス田は「一方的開発」

 防衛省の当初の白書案では、東シナ海での中国のガス田開発に関して「施設建設や探査を行っている」というレベルの記述に留めていた。だが自民党国防部会の要請を受け、中国が海洋プラットホームを増設させ、軍事基地化の危険があるとして「一方的な開発」だと追記した。

 実際、ガス田の施設はヘリポートの設置が可能で、その土台を堅牢にすれば、垂直離着陸機が発着できるばかりか、衛星の発射台としても利用できる。中国は単に資源を採掘・処理するだけでなく、戦略的拠点・軍事施設として利用することによって、東シナ海を「中国の海」とする意図があるという認識を持たなければならない。

 中国軍機に対する航空自衛隊機の緊急発進(スクランブル)回数が大幅に増えている状況(平成26年度は過去最高の464回)にも言及している。

 これらに対し、中国国防省は発表した声明の中で「正当な中国の国防と軍隊建設に勝手な評論を加えて中国脅威論を誇張し、中国軍のイメージに泥を塗っている」とし、「強烈な不満と断固たる反対」を表明した。

 南シナ海問題については「非当事国の日本はあることないことを言いふらして不和の種をまくべきではない」と主張。東シナ海での活動も「何ら非難される理由はない」と強調し、「日本は平和発展の道を歩み専守防衛を遂行すると言いつつ、軍事力を強化し集団的自衛権の行使を可能にしようとしている」と批判した。

 中国が反発することは織り込み済みだろう。今回の防衛白書は中国の脅威をかなり意識したものとなっている。

 北朝鮮に関しては、今年5月の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験を「打撃能力の多様化と残存性の向上を企図している」と分析。ミサイル開発について「重大かつ差し迫った脅威」と警鐘を鳴らした。

 また今回初めて、過激派組織「イスラム国」に言及。「並外れて潤沢な資金源や国家に対峙(たいじ)しうる強力な軍事力を有している」と分析し、国際テロの脅威は日本も無縁ではないと警告している。

 衆議院を通過した安全保障関連法案については、図表を使って概要を解説。今年4月に再改定された「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」は「平時から緊急事態までのあらゆる段階における抑止力および対処力を強化する」と説明した。

 米国の軍事費削減や中国の脅威増大によって、日本を取り巻く安全保障環境が大きく変化する中、もう少しページを割いて法案の重要性を解説する必要があっただろう。

抑止力としても有効

 その時々の国際情勢によって防衛白書の内容は変わってくるが、特に近年の中国軍の動向を国民に伝えることは大きな使命であり、中国に対する抑止力としても有効なのである。

(7月25日付社説)