五輪担当相、大会成功へ万全の態勢を
2020年の東京五輪・パラリンピックの開催準備を統括する専任の五輪担当相に、自民党の遠藤利明元文部科学副大臣が就任した。
五輪・パラリンピック特別措置法に基づくもので、閣僚枠は18人から1人増える。五輪担当相は大会運営の他、治安・テロ対策や外国人の受け入れ態勢整備などを担う。5年後の大会成功に向けて万全の態勢を構築すべきだ。
テロ対策が大きな課題
遠藤氏は党スポーツ立国調査会長として、五輪招致や今年10月予定のスポーツ庁発足にも尽力した。五輪担当相としての手腕に期待したい。
東京は13年9月にアルゼンチンの首都ブエノスアイレスで開かれた国際オリンピック委員会(IOC)総会で20年夏季五輪の開催地に選ばれた。
総会では安倍晋三首相や猪瀬直樹都知事(当時)らがプレゼンテーションを行ったほか、高円宮妃久子殿下がフランス語と英語で東日本大震災の復興支援への謝意を表された。国を挙げて勝ち取った五輪招致だったと言えよう。
ところが、ここにきて問題が生じている。東京五輪のメーン会場となる新国立競技場(東京都新宿区)の総工費が2500億円程度になるとみられていることだ。人件費や建築資材の高騰などを受け、基本設計時の1625億円から約900億円膨らんだ。
計画の甘さから当初の予定額を大幅に上回ったことに批判が高まっている。文部科学省は、都に事業費の一部として500億円程度の負担を要請しているが、舛添要一知事は「算定根拠が不明確で、都民に説明できない」と猛反発している。
こうした足並みの乱れに、IOCのバッハ会長も懸念を表明している。このままでは工事開始の時期も遅れかねない。事態収拾に向け、遠藤氏の力量が早速問われている。
テロ対策も大きな課題だ。13年4月に米東部ボストンのマラソン大会で発生し、子供を含む3人が死亡、264人が負傷した爆弾テロは、東京五輪のような大規模なスポーツイベントがテロの標的となり得ることを示した。
実行犯のチェチェン系の兄弟は、兄が警察との銃撃戦で死亡、逮捕された弟はボストン連邦地裁で死刑を宣告された。2人は国際テロ組織アルカイダの過激思想に影響されたと言われ、先進国出身者が自国を攻撃対象とする「国産テロ」への懸念は高まっている。
1972年のミュンヘン五輪では、パレスチナ武装組織が選手村を襲い、イスラエルのアスリート11人が殺害された。東京は五輪の招致活動で治安の良さを強調してきた。何としてもテロを防止しなければならない。遠藤氏には関係省庁と連携して警備態勢を強化するほか、必要な法整備を主導することも求められよう。
多くの訪日客を迎えたい
東京五輪に多くの外国人観光客を迎えられれば、観光立国にも弾みが付くだろう。
遠藤氏には、訪日客が快適に観戦できるための態勢整備を進めてほしい。