自転車の危険運転による事故防止を


 自転車の悪質・危険な運転者に安全講習の受講を義務付ける改正道路交通法が施行された。安全意識を根付かせて、自転車の危険な運転による事故を防止したい。

 高額賠償のケースも

 自転車運転者講習制度は、14歳以上の利用者が対象となる。信号無視や一時不停止、酒酔い運転など14類型の「危険行為」のいずれかで3年以内に2回以上摘発されると、安全講習の受講を義務付けられる。警察庁は全国で年間数百人に上るとみている。

 最近はスマートフォンを操作しながら片手で運転する人も見受けられるが、これで事故を起こしても危険行為として摘発され得る。受講命令に従わなかった場合は、5万円以下の罰金が科される。

 東京都内では、東日本大震災後に自転車で通勤する人が増えたという。気軽に乗れ、環境にも優しいのが魅力だが、危険な運転をすれば重大な事故を起こしかねない。

 重量のある電動アシスト機能付きやスピードの出るスポーツタイプも増えた。猛スピードで歩行者に衝突すれば、歩行者だけでなく運転している側も大けがをする可能性がある。今回の改正法施行を機に、自転車運転者の安全意識を高めることが求められる。

 自転車が関わった交通事故は2014年に10万9269件発生し、10年前より42%減少。このうち死亡事故は542件で38%減ったが、死亡事故全体に占める割合は1・3ポイント増の13・5%となっている。14年に交通事故で死傷した自転車運転者10万6427人のうち、約64%に当たる6万7876人に何らかの違反があった。

 歩行者との事故では、裁判で高額の賠償を命じられるケースもある。神戸市で08年、歩行者の女性が男児の自転車にはねられ、意識不明となった事故では、13年に約9500万円の支払いを命じる判決が確定した。

 免許の必要な車やバイクなどでは、違反の点数を積み重ねたドライバーに講習が用意されているが、自転車はなかった。悪質な自転車の運転者にもルールの重要性を学ぶ機会が必要だとして、13年6月に改正道交法が成立した。

 道交法では自転車は軽車両に分類され、13歳未満や70歳以上の人、道路工事などのやむを得ない場合などを除いて車道通行が原則だ。だが、こうしたルールを知らない人も少なくない。自転車で車道を走る際、そばを通り過ぎる車に恐怖を感じる人もいる。

 安全走行の「切り札」とされるのが自転車レーンの整備だ。だが道路の拡幅が必要な場合が多いため、用地不足やコストの問題で各自治体が二の足を踏んでいる。全国の道路計約120万㌔のうち、自転車レーンは14年4月時点で計約938㌔にすぎない。整備を進めるには、国が自治体を支援することも必要だろう。

 車両運転の責任自覚を

 自転車は車両であり、自転車を利用する人は車両の運転者としての責任を自覚しなければならない。警察庁は啓発を強化すべきだ。

(6月7日付社説)