FIFA汚職事件、うみを出し切り出直し図れ


 幹部の汚職事件に揺れる国際サッカー連盟(FIFA)のゼップ・ブラッター会長が辞任を表明した。
 ブラッター会長は先月末の会長選挙で5選を果たしたが、腐敗を招いた責任を問う声が高まっていた。FIFAはうみを出し切って解体的出直しを図るべきだ。

 米司法省が副会長ら起訴

 米司法省は先月、副会長を含む14人を起訴し、スイス当局が7人を逮捕した。賄賂を受けた見返りに、北中米や南米の大会の放映権などに絡んで便宜供与した疑いによるものだ。

 汚職規模は計1億5000万㌦(約186億円)に達し、捜査対象は1991年にさかのぼるという。汚職体質の根深さにあきれるばかりだ。ニューヨークの連邦地検は今回の起訴内容が調査の最終段階ではないとしており、事件は今後も広がりを見せる可能性がある。

 ワールドカップ(W杯)の2018年ロシア大会と22年カタール大会の招致に関わる疑惑でも、スイス司法当局が本格的捜査を開始した。

 両大会に関しては、10年の開催地決定前から英国のメディアが招致活動の不正を指摘。FIFAも倫理委員会の下で調査したが「不正なし」と片付けた。だが、報告書を作成した米国人弁護士のガルシア氏は倫理委の独立性に異を唱え辞任した。スイス当局は真相を徹底的に究明してほしい。

 FIFAの11年から4年間の総収入は57億1800万㌦(約7090億円)に上り、そのうちW杯の放映権料など大会絡みが約9割を占める。一方、W杯の開催地は25人の理事の投票で決められるなど密室性が極めて高く、不正が生まれやすい背景があった。

 今回の汚職事件について、ブラッター会長は自身の関与を否定しているが、トップとして責任を問われるのは当然だ。しかし、会長選の際には反省の色は見られなかった。選挙で勝利を収めて「間違いを犯したのは個人で、組織全体ではない」と開き直りとも取れる発言をした。会長選の前には欧州サッカー連盟のミシェル・プラティニ会長に辞任を求められたが、拒否したとされる。

 辞任表明に踏み切ったのは、司法当局の捜査次第では自身の関与が取り沙汰される可能性もあると判断したためとみられている。このほかスポンサー離れも懸念され、進退窮まった形だが、遅きに失したと言わざるを得ない。

 このような人物を会長に選んだFIFAにも、自浄能力が欠落している。その意味では、日本サッカー協会の大仁邦弥会長が、選挙でブラッター会長を支持する意向を示していたことも納得できない。アジアの大陸別出場枠を確保するためだったとの見方もあるが、改革に逆行するものだと批判されても仕方がないだろう。

 日本は積極的な協力を

 FIFA理事で日本協会の田嶋幸三副会長は「うみを出し尽くさないといけない。改革に向け、適した人材が必要だ」と述べた。日本はFIFAが健全な組織に生まれ変われるよう、積極的に協力すべきだ。

(6月5日付社説)