突然の噴火に備えの充実を


  鹿児島県・口永良部島の新岳(標高626㍍)の噴火はきのう午前11時前には停止したもようだ。
 だが今後、同規模の噴火が起こる可能性もあり、引き続き厳重な警戒が必要だ。

 避難訓練実施が奏功

 29日の新岳の噴火は、噴煙が火口上空9000㍍まで上昇し、全方位に火砕流が発生、一部は北西約2㌔の海岸に達した。火口付近では約1㍍の噴石が確認された。

 明確な前兆はなく、突然の噴火だったが、島民ら137人が約12㌔離れた屋久島に船などで避難して無事だった。避難所で一夜を過ごした地元住民らは、今後の生活不安を口にしているが、比較的落ち着いている印象だ。人的被害が小さかったことで、一応の安堵感もうかがえる。

 新岳は昨年8月、34年ぶりに噴火したため、気象庁は噴火警戒レベルを「3」に引き上げ、昨年と同規模の噴火が起きれば、全島避難を実施する方針を打ち出していた。地元自治体も火口から4㌔余り離れた鉄筋コンクリートの施設を新たに避難所に設定し、住民らはこの施設までの避難訓練を実施していた。突然の噴火に対応できたのはこうした備えがあったからだと言えよう。

 また死者57人、行方不明者6人を出し、戦後最悪の火山災害となった昨年9月の御嶽山噴火では、噴火直前まで低周波地震が時折発生していたが、気象庁は警報を出すに至らなかった。明確な前兆がない場合の行政の対応の難しさと言え、必ずしも今回の新岳噴火のケースと比較できないが、住民への警報のあり方について課題を突き付けたように思われる。

 このほど政府が閣議決定した活動火山対策特別措置法(活火山法)改正案では、噴火で住民や登山者に被害が発生する恐れのある地域を国が「火山災害警戒地域」に指定できるようになる。気象庁が24時間体制で常時監視している47火山と、今秋までに常時監視対象に追加される3火山を含めた50火山が指定される見通しだ。

 また50火山の周辺自治体は、設置を義務付けられる火山防災協議会の意見を踏まえ、噴火時の住民・登山者の避難や情報伝達の方法などについて定めた避難計画を作り、地域防災計画に盛り込む。火山災害警戒地域内にあるホテルやロープウエーなどの集客施設にも、避難計画作成や訓練実施が課される。今国会での成立を目指したい。

 ただし、これで事足りるということではない。各火山の性格は千差万別であり、また噴火による被害は、我々がそれぞれ生活している場所の地形や環境などに影響される。島嶼か、山岳地域か、沿岸地域かなどによっても異なる。

 過去の教訓の共有を

 その場所で過去、どのような噴火が起きてどの程度の被害があったのか。さらには、当時の人たちが、噴火の被害とどのように立ち向かってきたかを歴史から学び、その地域の人々の共通の知識とし、将来の噴火に備える自主的な行動を心掛けることが求められる。その地域に合わせた防災・公共事業を行うことも大切だ。

(5月31日付社説)