昭和の日、復興と繁栄の時代語り継ごう


 きょうは「昭和の日」。激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、日本の将来に思いを致したい。

 歴史認識示す戦後の歩み

 今年は戦後70年の節目の年に当たる。昭和初期は、6年に始まった満州事変から15年間は戦争の時代であった。その時代を語り継ぎ、振り返り、改めてその意味を問う作業が続けられている。

 一方、戦後の40年以上は、平和の中での復興から高度成長、そして繁栄の時代であった。昭和を顧みる時、ややもすると戦争の暗い時代が想起されがちだが、日本が元気だった戦後にもっと注目し、同様に語り継いでいくべきである。

 「昭和」という言葉は、世代によって受け止め方やニュアンスが異なるようだ。平成生まれの若い世代には、ただ古くさいというイメージを持つ人も見受けられる。

 しかし、はっきりしていることは、昭和の遺産の上に平成の現在の日本があるということである。

 もちろん、それには明と暗の部分があり、正と負の遺産がある。だが、敗戦に打ちひしがれた中から再び立ち上がり、奇跡的な復興を遂げ、繁栄の時代を築いていった。

 それは日本一国ではなく、アジアの近代化、成長にも大きく貢献するものだった。その意味では「大いなる昭和」と言ってよい。

戦争の記憶を風化させず、語り継ぐことはもちろん大切だが、復興と繁栄の時代も伝えたい。戦後のさまざまな製品開発や公共事業などを扱ったNHKの人気ドキュメンタリー番組「プロジェクトX」は海外の視聴者にも深い感銘を与えている。日本が元気で、輝いていた時代の経験もしっかりと継承していくべきである。

 安倍晋三首相が戦後70年談話の中で、戦後の日本の平和国家としての歩みと、今後の世界への貢献を語ることは時宜を得たものである。

 中国や韓国は「歴史を直視せよ」と注文を付けているが、歴史認識は、言葉よりも、その国の実際の行動によって示されるものである。日本がどのような歴史認識を持ったかは、戦後の歩みの中に表れている。

 20世紀の歴史の最大の悲劇は、ナチスのユダヤ人虐殺に代表される民族浄化や、少数民族やその文化の弾圧であった。現在、チベットやウイグルで起きていることを見れば、中国こそ、歴史から何も学んでいないと言わざるを得ない。

 政治やイデオロギーのバイアスを掛けずに、昭和の人々の喜びや悲しみを、そのままに伝えることが、歴史から学ぶ基本であり、その歴史を精一杯生きてきた人々への礼儀である。

 天皇の御聖断伝えたい

 そして激動の時代を経て、輝かしい繁栄の時代を築いたその中心におられたのが昭和天皇であった。軍部の横暴に苦悩されながら、この国を滅亡から救うために下された終戦の御聖断が、戦後日本の出発点にあったことを忘れてはならない。

 その無私の精神と国家、国民を思う大御心を次の世代にも語り伝えていきたい。

(4月29日付社説)