川内差し止め却下 妥当な判決、再稼働進めよ
鹿児島地裁は、九州電力川内原発1、2号機(同県薩摩川内市)の再稼働をめぐり、運転差し止めを求めた反対派住民側の申し立てを却下する決定を出した。妥当な判断である。九電は、同原発の今夏再稼働に向けた準備を着々と進めるべきだ。
人格権侵害の恐れなし
同地裁の前田郁勝裁判長は、原子力規制委員会の策定した新規制基準に関して「不合理な点は認められない」と判断するとともに「最新の研究成果や調査結果を踏まえ、多数の専門家が検討した。東京電力福島第1原発事故の経験も考慮した」と評価した。
また具体的な争点となっていた地震対策や火山活動の影響、避難計画の実効性についていずれも住民側の主張を退けた。
耐震設計については「安全上の余裕を確保するとともに、重大事故対策として、保安設備の追加配備などをしている」、避難計画も「原発からの距離で区分された地域の避難行動が具体的に定められている」とした。その上で「(再稼働によって)住民の人格権が侵害される恐れはない」と結論付けた。
原発の再稼働をめぐっては福井地裁が先日、「基準地震動について、全国の原発で過去10年間に5回、電力会社の想定を超える揺れが記録された事実を重視すべき」などと新規制基準を疑問視して、関西電力高浜原発3、4号機の差し止めを認める仮処分決定を出した。
これに対し、前田裁判長は「新基準では、基準地震動を超えた原因とされる地域的特性を考慮できるように、策定手法が高度化されている」と、福井地裁の見解を真っ向から否定した。
今回の鹿児島地裁の判断は、四国電力伊方原発の設置許可の是非をめぐって争われた1992年の最高裁判決で「最新の科学的、専門技術的知識に基づく総合的な判断が必要」とした判例に沿ったものだ。鹿児島地裁は「裁判所の判断は、規制委の審査の過程に不合理な点があるか否かとの観点で行うべきだ」とも指摘している。
一方、規制委の田中俊一委員長は「絶対安全を求めると、結局は安全神話に陥るという立場で(規制を)やってきている」と述べた。「ゼロリスク」や「絶対安全」を前面に立てて安全性を審議することの非合理性に言及したものだ。
こうした安全性追求の視点は、福島での事故後浸透しているとみていいだろう。今回の司法判断に対しても地元の岩切秀雄薩摩川内市長は「いろいろな角度から詳細に避難計画を作るべきだと思っている。原子力防災訓練で生じる問題や課題を修正するなど、実効性を高めていきたい」と話した。現実的な原発の安全対策を営々と進めていくことが肝要だ。
原発比率22%が目標
温室効果ガスの排出削減や電気料金の抑制には再生可能エネルギーの拡大だけでなく、原発の一定の活用が必要だ。
経済産業省は、2030年時点の最適な電源構成(ベストミックス)について、原発の比率を20~22%、再生エネを22~24%とする原案を固めた。川内1、2号機の再稼働準備の遺漏なきよう求めたい。
(4月25日付社説)