パラオ御訪問、深い感銘残された慰霊と親善
美しい海に臨む慰霊碑に、天皇、皇后両陛下は日本から持参された白菊の花束を供えられ、深々と拝礼された。この瞬間、戦陣に散った英霊たちとその遺族、そして生き残った元日本軍兵士の心は何ものにも代え難い癒やしを受けたに違いない。
両陛下が戦没者に御供花
天皇、皇后両陛下は、戦後70年の戦没者慰霊と友好親善のためパラオを公式訪問され、激戦地ペリリュー島にある日本政府建立の「西太平洋戦没者の碑」に供花された。同島では、1944年9月から2カ月にわたって日米両軍が激戦を繰り広げ、日本側は約1万人、米側は約1700人が戦死した。
約4万人の米軍に対し、日本の守備隊約1万人が応戦。米軍上陸後も日本軍は島内の洞窟陣地に立てこもって持久戦を展開した。米軍の戦車攻撃に対しては、地雷を抱えて戦車に突撃する特攻攻撃も行われた。
日本軍は約450人を残して全滅。守備隊本部の玉砕の後も34人の兵士が洞窟に2年半もの間、潜伏するなど、悲惨な戦いが続けられた。
両陛下は御供花の後、その場に参席した日本からの遺族や生き残りの元兵士に親しくお声を掛け慰労された。米軍の戦没者をまつる「米陸軍第81歩兵師団慰霊碑」も訪問され、花輪を供えられた。先の大戦で亡くなった全ての人々を追悼し、傷ついた人々の心に寄り添われるという、お気持ちの表れである。
両陛下は平成17年6月、米自治領サイパン島で初めて海外での慰霊を果たされたが、ペリリュー島御訪問は長年の悲願であった。御訪問に先立ち、ペリリュー島の戦いから生還した元日本軍兵士を皇居に招いて面会されている。
御出発前には「太平洋に浮かぶ美しい島々で、このような悲しい歴史があったことを、私どもは決して忘れてはならないと思います」と語られた。今回の御訪問は、慰霊とともに平和への祈りの旅でもあった。
パラオは、日本が第1次大戦終結後、委任統治した国で、多くの日本人が移り住み、「世界一の親日国」と言われる。同国の人々の温かい歓迎ぶりにそれが表れていた。
今回の御訪問には、この日本と縁の深い国との友好協力関係をさらに深める意味もあった。陛下は、晩餐会での御答辞で、パラオの人々が厳しい戦禍を体験したにもかかわらず、戦後に慰霊碑や墓地の管理、清掃、遺骨の収集などに尽力したことに心からの謝意を表された。
陛下のこのようなお気持ちはレメンゲサウ大統領はじめパラオの人々に十分に通じたものと思われる。今回の御訪問で、ペリリュー島の戦い、そしてパラオについて、日本人が関心を高めたことも意義のあることだ。同国と日本のさらなる友好協力関係の進展を期待したい。
島嶼国の元首と共に
晩餐会そして慰霊碑への御供花の場には、モリ・ミクロネシア大統領夫妻、ロヤック・マーシャル諸島大統領夫妻も同席した。陛下は両国大統領夫妻にも感謝の意を表された。これら西太平洋の島嶼国の元首と、慰霊と平和の祈りの時を共に持たれたことは意義深いものだった。
(4月10日付社説)