ケニア襲撃、宗教対立煽るテロを許すな
ケニア東部ガリッサの大学が武装集団に襲撃され、学生ら148人が死亡した。
武装集団はキリスト教徒を選び出して攻撃した。イスラム教徒とキリスト教徒の対立を煽(あお)る狙いがあったとされる。決して許されない蛮行だ。
非イスラム教徒が標的
襲撃については、隣国ソマリアのアルカイダ系イスラム過激派アルシャバーブが犯行を認めている。ケニア政府は同組織の幹部モハメド・モハマド容疑者を事件の首謀者と断定した。
実行犯4人は学生にイスラム教の聖典「コーラン」の一節を暗唱させてイスラム教徒かどうか確認し、キリスト教徒のみに攻撃を加えた。実行犯の前にいた3人の女学生が「ジーザス(イエス・キリスト)我々を助けてください」と思わず口にしてしまい、射殺されたとの証言もある。凄惨極まりない話だ。
爆発物を身に付けていた実行犯4人は、ケニア軍部隊が突入した際、いずれも自爆した。アルシャバーブは襲撃後に出した声明の中で「標的は非イスラム教徒だけだった。不信心者(非イスラム教徒)の処刑に先立ち、イスラム教徒は全員、安全に避難させた」としている。
自分が信じる宗教の信者ではないという理由だけで殺害するなど、決してあってはならないことだ。独善的で非道な蛮行を許すことはできない。
ケニアはキリスト教徒が国民の8割を占め、イスラム教徒は1割だ。非イスラム教徒を狙うことで、キリスト教徒とイスラム教徒の対立を扇動する狙いがあるとみられている。
アルシャバーブはここ数年、拠点のソマリアで勢いを失っていた。一方、アフリカ連合(AU)の平和維持活動で軍事介入したケニアへの反発を強め、2013年9月に首都ナイロビのショッピングモールを襲撃して67人の死者を出した。
今回の襲撃後、アルシャバーブは「ケニア政府が抑圧をやめるまで、われわれは手段を選ばず、イスラムの兄弟たちの死に報復する」と宣言した。「ケニアの都市は血に染まる。ケニア国民が最初の犠牲者だ」と主張し、学校や大学のほか、職場や個人宅にも攻撃を加えると警告している。
ケニア当局は警戒を強める必要がある。今回の襲撃前にも不審な人物が目撃されており、大学が近いうちに襲われるのではないかとの警告もあったとされる。しかし大学を警備していたのは武装警官2人のみで、武装集団に直ちに射殺された。アルシャバーブはナイロビなどで戦闘員の勧誘に力を入れており、ケニア国内でネットワークを広げているという。
アフリカでは先月、チュニジアで観光客が襲撃され、日本人3人を含む外国人20人以上が死亡するテロが起きたばかりだ。ナイジェリアのイスラム過激派ボコ・ハラムなども活動を活発化させている。アルシャバーブが、こうした組織と連携を強めることが懸念される。
相互理解を深めたい
国際社会がテロ封じ込めを強化するのはもちろんだが、長期的には宗教間の相互理解を深めていくことも過激派の孤立につながろう。
(4月5日付社説)