仙台枠組み、日本は世界の防災リードせよ


 仙台市で開かれていた第3回国連防災世界会議で、2016年以降の国際的な防災指針となる「仙台防災枠組み」が採択された。

 枠組みでは世界全体の災害による死亡率や被災者数の削減など七つの指標が設定されたが、国連が減災の具体的な項目や期限を示して各国に取り組みを求めるのは初めてのことだ。

国連が初めて目標掲げる

 仙台枠組みは、05年の前回会議(神戸市)で策定された10年間の防災指針「兵庫行動枠組み」の後継となるものだ。この枠組みに沿いながら、日本は世界の防災をリードすべきである。

 枠組みではまず、過去10年間の災害による犠牲者が70万人を超え、経済損失は1・3兆㌦以上に上るとし、効果的に人命がや地域社会を守るための防災対策が重要とされた。

 今回初めて設けられた減災目標は、死者や被災者の数について「10万人当たりの平均値を20~30年の間に05~15年より減らし、30年までに実質的に削減する」というもの。このほか経済損失を減らすことや、途上国への国際協力、災害発生を予測する早期警戒システムの利用者、防災戦略を策定する国を拡大することなどが掲げられた。

 「世界各地における災害の衝撃や複雑さを認識し、人命や資産の損失を世界規模で減らす」ことをうたった「仙台宣言」も採択され、会議は一定の成果を上げたと言える。

 しかし、枠組みの採択が予定時刻より約11時間も遅れたことにも示されているように、防災・減災でも世界各国、とりわけ先進国と途上国の思惑の違いが表れた。

 途上国では「スーパー台風」など災害の大規模化の背景に地球温暖化があるとする見方が強い。これまで、温室ガスを大量に排出し、産業化、近代化を進めてその恩恵を受けている先進国の責任を、温暖化と同様、防災の問題にも当てはめようとするものである。

 今年12月にはパリで国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)が開かれることもあり、先進国と途上国の対立が表面化した。そういう中で、日本は対立を解消する調停者としての役割を果たし、世界の防災・減災をリードしていく使命がある。

 日本は、先進国の中でも最も自然災害の多い国である。東日本大震災の甚大な被害が象徴するように、世界有数の地震・津波多発国だ。さらに台風の通り道であり、火山災害もある。

 一昨年の伊豆大島、昨年の広島の豪雨被害など、その大規模化と温暖化を日本人の多くは無関係とは考えられない。

 海面上昇に苦しむ太平洋の島嶼国家の危機感も、同じ島国として大陸諸国よりは遙かに身近なものとして捉えられるはずである。

技術やノウハウ生かせ

 地震や台風などの予測や早期警戒システムも進んでいる。蓄積してきた技術やノウハウを世界、とりわけ途上国の防災・減災に生かしたい。

 災害多発国で科学技術大国の日本は、防災での世界への貢献を宿命づけられていると言っていい。

(3月22日付社説)