ウクライナ危機、無条件の停戦合意履行を


 ウクライナ東部の紛争の収拾を目指す停戦合意がいったん成立したものの、なお一部地域で親露派武装勢力とウクライナ軍との間の戦闘が続いており、情勢は予断を許さない。当事者すべてに無条件の停戦合意の履行を強く求めたい。

発効後も砲撃や市街戦

 ウクライナとロシア、親露派武装勢力、欧州安保協力機構(OSCE)の代表はベラルーシの首都ミンスクで協議し、「ミンスク停戦合意」の履行に関する文書を承認。ドイツ、フランス、ロシア、ウクライナの首脳による「ノルマンディー4者協議」が深夜に長時間続いた結果、4首脳はこの文書の支持を表明する共同宣言を採択した。

 昨年9月の「ミンスク停戦合意」はすぐに破られ、今年に入って東部ドネツク、ルガンスク2州での親露派武装勢力とウクライナ軍との戦闘は激しさを増していた。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の発表によれば、昨年4月に始まったウクライナ東部の紛争では、今月半ばまでに死者5665人、負傷者1万3961人を数える。

 再度の停戦合意に向けて積極的に動いたのは、ドイツのメルケル首相とフランスのオランド大統領であった。両首脳は今月初め、モスクワに飛んでロシアのプーチン大統領と会談。メルケル首相はその後ワシントンでオバマ米大統領と協議した。

 独仏両国の首脳が外交活動を急いだ背景には、米国のウクライナ支援の姿勢があった。上下両院を握った共和党の幹部によるウクライナへの武器支援主張を受け入れたオバマ大統領は、この選択肢を排除しないとの考えを明らかにした。

 米国製最新武器が実際に供与されれば、反発したロシアが本格的に軍事介入して、ウクライナにおける米露代理戦争が始まることも考えられる。それが欧州に拡大することを独仏首脳は強く危惧したとみられている。

 4カ国首脳は16時間に及ぶマラソン協議の結果、キエフ時間15日午前零時からの停戦で合意した。紛争当事者のウクライナ政府と親露派武装勢力の双方は、停戦ラインから重火器を引き離し、幅50㌔以上の緩衝地帯を設けることや、親露派支配地域への「特別な地位」付与など13項目の合意文書に調印した。

 しかし重火器の撤去に関しては、停戦後2日以内に開始し、2週間以内に完了するとの取り決めにもかかわらず、順守される気配が見られなかった。「完全かつ無条件の停戦」には程遠い状況だ。

 また、ドネツク州の要衝デバリツェボでは、停戦合意発効後も砲撃や市街戦が起き、親露派武装勢力によって数千人のウクライナ軍兵士が包囲されたと伝えられる。

 デバリツェボは親露派武装勢力が拠点とする都市ドネツクとルガンスクを結ぶ鉄道や道路の中間地点。ウクライナ大統領府は親露派武装勢力が停戦合意を履行していないと非難したが、同勢力はデバリツェボの大部分を制圧したと発表した。

露は親露派に働き掛けよ

 発表が事実であれば明白な合意違反に当たる。ロシアは停戦実現に向け、親露派への働き掛けを強めるべきだ。

(2月19日付社説)