国家安保に不可欠な秘密保護法


 政府は特定秘密保護法案を国会に提出した。すでに国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案は審議入りしている。いずれも国民の安全を守るために不可欠な法整備だ。政府は国会審議を通じて両法案の必要性を国民に明示し、今国会での成立を期すべきだ。

 一部メディアが反対

 わが国を取り巻く安全保障環境は近年、一段と厳しさを増している。このような中で国民の安全を守るには正確な情報の収集と分析、そして迅速かつ的確な意思決定が求められる。そうした司令塔が存在しなければ、危機に直面した場合、国民の生命が脅かされる。

 それで、どの国も情報収集に余念がなく、さまざまな情報(インフォメーション)を精査して確度の高い情報(インテリジェンス)へと集約し、それに基づき危機管理の最終決定権者が国家意思を決める。米国の場合、国家安全保障会議(NSC)がその役割を担っている。

 ところが、わが国にはそうした司令塔が存在しない。今年1月のアルジェリア人質事件に関して、政府の有識者懇談会が危機発生前の情報収集・分析体制が不備と指摘するとともに、「行政の縦割り」の弊害を排除し、「オールジャパン」の対応が必要としている。こうした提言も踏まえ、司令塔として日本版NSCをつくろうというのが安倍政権の狙いだ。これに異論はさほどあるまい。

 設置法案は同盟国などからの情報提供を前提としている。例えば、テロ関与が疑われる人物の入国を阻止したり、テロを未然に防止したりするには各国間の情報共有が有効で、関係機関は提携を進めている。

 ところが、わが国の情報保護体制が不十分で、他国から疑問が投げかけられてきた。例えば、警視庁は2010年秋に国際テロに関する極秘書類100点以上をインターネット上に流失させた。この事件では犯人を特定できず、29日午前0時で公訴時効を迎えた。これでは他国は情報提供を躊躇する。

 このままではわが国は情報真空地帯となり、いくらNSCをつくっても機能不全に陥りかねない。新たな情報保護体制が必要となるゆえんだ。

 これに対して一部メディアは特定秘密保護法案が「知る権利」を脅かすとして反対している。確かに情報保護は知る権利と対立するが、情報保護が不必要とは決して言えまい。

 法案には「知る権利」や「報道・取材の自由」に配慮するよう明記されている。また外務省機密漏洩事件で、最高裁は正当な取材方法であれば、たとえ誘導的になっても「漏洩の教唆」に当たらないとの判断を示している(1978年)。窃盗や脅しなどの犯罪行為や社会倫理から逸脱する「不当な方法」でなければ、取材は自由である。メディア関係者が萎縮する必要はさらさらない。

 国会で論議を深めよ

 NSCが必要であれば当然、そのための情報保護体制が不可欠で、それにはいかなる法整備が望ましいのか。国会で論議を深めていくべきだ。国民の安全を守るため、大局的見地に立って法案審議を進めてほしい。

(10月30日付社説)