電源構成、適切な原発比率の議論を
経済産業省の有識者会議「長期エネルギー需給見通し小委員会」が、エネルギーのベストミックス(最適な電源構成)についての議論を始めた。2030年の時点で、日本が原発や火力発電、太陽光などの再生可能エネルギーをどのような比率で使うかを検討する。
焦点となるのは原発比率だ。日本の将来を見据え、適切な結論を出してほしい。
震災前より電気料金上昇
東京電力福島第1原発事故の影響で、国内の原発は現在全て停止している。安倍晋三首相は「安全性が確認された原発は、地元の理解を得つつ再稼働を進める」としている。
安倍政権は昨年に閣議決定したエネルギー基本計画で、原発を「重要なベースロード電源」と位置付ける一方、事故前に3割だった比率を「可能な限り低減する」とした。これを受け、経産省は15~25%を軸に詰める見通しだ。
原発停止で、日本の電力は全体の9割を火力発電に頼っている。燃料費が増加したため、震災前に比べて電気料金が2~3割上昇し、家計や企業の負担が大きくなった。安倍政権はデフレ脱却と経済成長を目指しているが、その足かせとなることも考えられよう。
また、火力発電は大量の温室効果ガスを出す。環境省の昨年12月の発表によれば、13年度の日本の温室ガス排出量が二酸化炭素(CO2)換算で前年度比1・6%増の13億9500万㌧(速報値)だった。統計を取り始めた1990年度以降、最大だった07年度を100万㌧上回っている。同省は原発事故前の電源構成であれば、排出量は1億4700万㌧程度低い水準だったとする試算も示した。
各国は温室ガス排出削減のため、今年末にパリで開かれる国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で、20年以降の新たな国際枠組みについて合意することを目指している。経産省は夏前までに電源構成を固め、削減目標に反映させる方針だが、排出量ゼロの原発や再生可能エネルギーをどの程度活用するかが問われる。
原発の運転期間は、13年7月施行の改正原子炉等規制法で原則40年に制限された。全原発が40年で廃炉になった場合、30年時点の比率は15%程度となる。ただ、原子力関連の技術や人材の維持には2割程度が必要だとも言われる。そのためには、運転を20年延長できる制度の適用や、建設中の中国電力島根原発3号機、電源開発大間原発の稼働が欠かせない。
原発事故後、化石燃料の輸入増加でエネルギー自給率は事故前の19・9%から6・3%に低下した。これでは海外情勢が悪化した場合、エネルギー確保が難しくなる。自給率を高めるような電源構成を策定しなければならない。
再生エネには欠点も
原発事故を踏まえ、再生エネルギーを大幅に導入すべきだとの意見もある。再生エネルギーは環境負荷が小さく、可能な限り活用したい。だが、発電量が天候に左右されやすく、コストが高いという欠点もある。電源構成をめぐる議論では電力の安定供給を第一に考えるべきだ。
(2月8日付社説)