特殊詐欺最悪、水際阻止へ官民で協力を


 振り込め詐欺など「特殊詐欺」の被害が増え続けている。警察庁によると、2014年の被害総額は前年よりも約70億円増えて過去最悪の559億円に上った。年間500億円を超えたのは初めてだ。

被害者の8割が高齢者

 毎日、平均して1億5000万円余りの被害ということになる。被害者の5人中4人が65歳以上の高齢者。地方でも多発する傾向にある。強盗や横領などを含めた現金被害のほぼ半分を占め、次に多い窃盗の3・2倍という深刻な事態だ。

 警察庁の金高雅仁長官は「日本が超高齢社会で、個人資産が高齢者世帯に集中する実態をヤミ社会が突いた点で深刻」と語っている。

 最も被害が大きかったのは、金融商品に絡む詐欺で約195億円。次いで、電話で子や孫を装う「おれおれ詐欺」が174億円だった。

 犯行グループが現金を受け取る手段は「手渡し型」が236億円で最多。宅配便やレターパックを使う「送付型」も激増しており、被害は81億円増の212億円だ。「振り込み型」は107億円で4億円減っている。

 被害者の多くは、新聞やテレビなどを通じ、特殊詐欺について知っていたに違いない。しかし、いざ孫や子を名乗る人物から「会社の金を使い込んでしまった」などと言われると、動転して冷静な判断ができなくなるのである。

 また、その手口も変化して複雑化する。新しい手口や傾向については、メディアも積極的に報じていく必要がある。特に高齢者が最も情報源とするテレビは、予防に資する報道を心掛けるべきである。

 一方、金融機関の窓口や宅配会社のドライバーの機転で犯行を水際で阻止したケースも増えている。14年中に詐欺を未然に阻止できた件数は1万731件で、その金額は297億円。うち金融機関の職員が防いだケースが全金額の84・2%に上る。送付型の犯行が増えていることを考えると、宅配会社の一層の協力を得ることも重要になっている。

 警察庁は、被害阻止と犯行グループの中枢摘発を強化する考えだが、官民を挙げての取り組みが重要だ。様々な対策を講じているにもかかわらず、被害に歯止めがかからない状況を考えると、一人ひとりが、大きな額のお金は、素性のはっきりしない、確認できない相手には絶対に渡さないという習慣をつくり上げることが大切だろう。

 お金に関わる新しい習慣は一朝一夕で身に付くものではない。しかし今後、超高齢化社会がさらに進んでいくことを考えると、長い目で取り組む価値のある課題である。

小切手利用の定着図れ

 その意味では、預金小切手の利用の拡大も有功だろう。静岡県が13年に始め、現在28府県で取り組みが行われている。預金小切手は名前を書いた相手しか換金できない。また、換金の際には本人確認が必要で、取引の記録も残る。

 欧米では小切手の利用は一般化しているが、日本にはこのような文化がない。長い目で定着を図っていくべきだ。

(2月1日付社説)