迅速な対応で鳥インフルエンザの被害最小化を
鳥インフルエンザの感染が西日本各地で確認されている。渡り鳥によってウイルスが持ち込まれるのを防ぐのは難しいが、万一発生した場合は迅速な対応で被害を最小化することが求められる。
西日本各地で感染確認
この冬の発生は、昨年12月に宮崎と山口、今年に入ってからは岡山と佐賀の各県で計5例に上っている。
鶏の殺処分などの措置で、すでに宮崎と山口では移動制限が解除された。岡山と佐賀も新たな異常がなければ2月には解除される見通しだ。
殺処分されたのは全部で約35万羽。全国では約1億7000万羽が飼われているので、鶏肉や鶏卵の供給が不足して値段が上がるという状況ではない。だが今後も国内で広範囲に流行する恐れがあり、警戒を怠ってはならない。
いずれもウイルスは高病原性の「H5N8亜型」で、韓国で猛威を振るう鳥インフルと同じ型だ。韓国では昨年、南西部を中心にアヒルや鶏など約1450万羽が殺処分された。
ウイルスの侵入を防ぐには、養鶏場への出入り制限や靴の消毒などの地道な対策が欠かせない。建物の穴をふさいだり、養鶏場の周囲に防鳥ネットを張り巡らせたりすることも求められよう。
ただ、韓半島を経由して飛来する渡り鳥がウイルスを日本国内に持ち込むことを防ぐのは困難だ。感染防止に全力を挙げるのはもちろんだが、万一鳥インフルが発生した場合は感染を拡大させないために早急に対処することが必要だ。
その意味で、今回は封じ込めが順調に進んでいると言える。山口では79年ぶりの国内での発生となった2004年、初動の遅れが問題となったことを教訓に迅速な対応に努めた。岡山では陸上自衛隊が出動し、20万羽を4日間で殺処分した。
鳥インフルは10年11月~11年3月にかけ、島根、千葉など9県で発生し、約183万羽が殺処分された。これを受け、伝染病で家畜を処分した畜産家への補償額を8割から満額にする法改正を行ったことが早期通報を促し、被害拡大防止につながっているとみていい。
ただ今回、いずれも感染経路は特定できていない。岡山では鶏舎に小動物が入ることのできる隙間があったというが、これが感染の原因になったかどうかは現在のところ不明だ。解明に努めてほしい。
口蹄疫にも万全の対策を
韓国では現在、鳥インフルエンザのほか豚や牛が感染する口蹄疫も拡大している。2月後半には中国などの旧正月休暇で人の往来が活発化するため、こちらに対しても警戒を強める必要がある。
日本では5年前、宮崎県で発生して30万頭近い家畜が殺処分された。経済的損失は2350億円に上ったとされる。それ以降は感染例はないが、油断は禁物だ。
農林水産省は空港などでの水際対策を徹底するとともに、畜舎に入る際の消毒など衛生管理基準の厳守を生産者に重ねて呼び掛けている。万全の対策を講じるべきだ。
(1月24日付社説)