異物混入、企業の危機管理再検証を


 日本マクドナルドホールディングスは、商品に相次いで異物が混入していた問題で記者会見を開き陳謝した。しかしその後も異物が見つかり、製品に対する消費者の不安が広がりつつある。マクドナルドは危機対応に厳格であるべきだ。

業界トップのおごり

 同会見では件数やその内容について明言を避け最近の四つの苦情例を挙げた。福島県郡山市でカップ入りデザートを購入した客からは、プラスチック片で子供が口の中にけがをしたとの申し出があった。調査の結果、製造機械の部品の一部が破損して混入したことが判明した。

 また青森県や東京都の店で「チキンマックナゲット」からビニール片とみられる異物が相次ぎ見つかった。同社は青森県の件はタイの工場で混入した可能性があると説明。もう一方は、店舗で混ざったのか調査しているという。

 また、大阪府内の店で「マックフライポテト」に人の歯が混入していると苦情があった件について「揚げられた形跡はなかった」と述べ、製造過程で混ざった可能性は低いとの認識を示した。マクドナルドはこの4件について「客に広範な影響を与えない」と判断し、これまで公表を見送っていた。

 同社は客の苦情には個別に対応し、その際に対象製品を回収し専門機関で分析して客の納得を求めることで処理が完結するのが基本だという。また食中毒など「大きな品質問題」と判断した案件以外は公表していない。今回、インターネット上に異物混入の情報が掲載されることで、同様の事故の存在が次々と明らかになり、消費者の間に不安を拡散させる結果となった。

 これに対し記者会見では謝罪はしたが、子供が負傷したケースも「個別の案件」であり、その他の苦情も一つ一つ誠実に対処してきていると説明し理解を求めた。その上で品質管理に自信を見せ、苦情対応も従来の手法で事足れりとしている。

 だが、会見後も異物が見つかっている。特に小さい子供を持つ親はその情報に振り回され、食品不信が高じ、ゆゆしき事態になりかねない。危機管理意識が希薄だったのではないか。業種は違うが、昨年顧客情報が流出する不祥事を招いたベネッセも当初、反応が鈍かった。いずれも業界のトップランナーとしてのおごりがあった。問題を重大視すれば、かえって消費者の食品不安を助長するという傲慢(ごうまん)さが見え隠れした。

 ネット時代の今日、予想の規模を超えた被害を、客と企業双方にもたらし不信を増幅させかねない。今回の異物混入発覚を奇貨として、マクドナルドは従業員教育や工場のそれぞれの行程における品質管理の点検、組織全体の安全、安心についての意識統一を行うべきである。

「事故ゼロ」を目指せ

 記者会見では、客が12億人もおり、不可抗力的な事故は必ずしもなくせないというようなニュアンスの答えをしていた。確かに一面、正しいかもしれないが、食品関連企業が口にすることではないはずだ。事故は必ずなくなるという信念を持ち、食品の安全を不断に追求していくことが本来あるべき姿である。

(1月11日付社説)