日韓国交50年、首脳会談開催の好機とせよ


 日本と韓国は今年、国交正常化に向けた経済協力や請求権解決などの諸要件を取り決めた日韓基本条約(1965年6月22日署名)を結んでから50年を迎えた。近年、両国はいわゆる従軍慰安婦や竹島領有権、靖国神社参拝など歴史認識をめぐる問題で関係が悪化しているが、この大きな節目で未来志向を再確認し、首脳会談開催をはじめ関係改善に向けたより具体的な成果を生み出す好機とすべきだ。

国益損なう嫌韓・反日

 基本条約に向けた交渉には、日本の植民地支配を受けた韓国側の猛烈な反日感情が大きく立ちはだかったが、締結の前年、朴正熙大統領(当時)は「その是非は歴史の判断に任せ、今は所信に沿って国交正常化を果たそう」と言って周囲を説得し、大きく前進した。

 韓国は基本条約で日本から莫大な経済支援を受け、祖国の近代化に成功し、「漢江の奇跡」と呼ばれる高度経済成長につなげることができた。経済力で北朝鮮を圧倒するようになり、国内では民主化を進め、北東アジアの安全保障で日米と連携することで北朝鮮に「南侵」を思いとどまらせる基盤を築いた。韓国が現在、民主主義と市場経済を謳歌するようになったのは、その出発点において日本との国交正常化が果たした役割が大きい。

 だが、残念なことに近年の日韓関係は悪化の一途をたどっている。2012年には任期末の李明博大統領(当時)が竹島に上陸し、日本側を驚かせた。その後の朴槿恵大統領も安倍晋三政権が“右傾化”していると批判し、歴史の問題で誠意ある行動を取ることを首脳会談の前提条件として求め続けている。両首脳とも就任から約2年たつにもかかわらず、第三者を交えない一対一の会談を一度も行えずにいるのは遺憾だ。

 日本側でも嫌韓感情がこれまでにないほど広がり、嫌韓本が飛ぶように売れたり、国内に居住する韓国・朝鮮籍の人たちに向けたヘイトスピーチ(憎悪表現)が横行したりした。産経新聞前ソウル支局長が記事で朴大統領の名誉を傷つけたとして市民団体から告発される事態が生じたことも、こうした感情をさらに増幅させた感は否めない。

 しかし、このまま日本の嫌韓、韓国の反日が続くことは、両国の国益にとって決してプラスにはなるまい。特に武力挑発を続ける北朝鮮の脅威に対し、両国の緊密な協力態勢は不可欠だ。日韓分断を密かに望む中国の存在も考慮すべきだろう。

 経済協力でも日本企業が部品や資本財を供給し、それを基に韓国企業が最終財を生産する従来の垂直関係に加え、第三国での資源開発やインフラ整備を共同推進するなど「ウィン・ウィン(双方にメリット)」な水平関係も増えつつある。相手国への訪問者数の多さや次世代を担う学生同士の交流などを見ても、日韓関係の重要さに疑いを挟む余地はない。

国際社会も両国に注目

 国際社会は、北東アジアで主導的役割を担う日韓両国が国交正常化50年を機にどのように向き合うのか注目している。トップ同士の話し合いで、次の50年に向けた一歩を踏み出す活力を生み出さなければならない。

(1月4日付社説)