朝日社長会見、抽象的な応答が目立った


 実況中継中のニコニコ動画が「重要な問いに『重く受け止めている』という回答の仕方はフェアではない」という視聴者からの声が届いていることを紹介し「重く受け止めることの具体的内容」の答えを迫った。しかし、抽象的な応答の域を出ず、落胆させられたと言わざるを得ない。

第三者委報告受け見解

 朝日新聞社の渡辺雅隆社長は記者会見し、いわゆる従軍慰安婦報道を検証した第三者委員会(中込秀樹委員長=元名古屋高裁長官)が22日にまとめた報告を受け、社としての見解と取り組みを発表した。

 渡辺社長は質疑応答の前に「思い込みや先入観を排し、公正で正確な事実に迫る取材を重ね」ること、朝日への異論や反論を含め「多様な視点・意見を取り上げる『言論の広場』としての機能」の充実を図り、社外の声に「耳を傾け続ける仕組み」をつくることなど、社員一丸となって行う改革への取り組みを語った。

 また、報告が指摘した1997年と今年8月の検証特集記事について「(慰安婦記事の)誤りを率直に認めて謝罪し、わかりやすく説明する姿勢に欠け」、批判に対し自社弁護の「内向きの思考に陥っていた」ことを認めて深い反省を表明。信頼を損ねたことを改めて謝罪した。

 さらに報告書の英、中、韓国語版を作成し、国際社会に発信すると語った。汚された日本のイメージ回復への具体的な一歩を踏み出すことを期待したい。

 見解と取り組みは、第三者委員会の報告を①経営と編集の関係②報道のあり方③慰安婦報道――の3点に整理している。

 このうち②報道のあり方については、まず批判に謙虚に耳を傾ける姿勢の欠如を反省。読者の視点で事実と向き合う、記事を継続的に点検し誤りは速やかに認めて訂正する、多様な意見を伝え公正で正確な報道を目指す――としている。いずれも報道のあり方の基本であり、そのまま記者教育のテキストになる内容である。朝日の取り組みを観察するとともに、ジャーナリズムの現場に身を置く者として本紙も自戒したい。

 問題の最大のポイントである③慰安婦報道では、虚偽性が指摘された1980~90年代の吉田証言記事、92年の「軍関与」記事に付帯した不正確な用語メモを放置し続けたことを謝罪。97年の検証特集でも、吉田証言の「裏付け取材を尽くし、取り消し・訂正をすべき」だったとの見解を示した。

 その上で、それまでの吉田証言による記事の誤りを総括しないまま頬かむりし、慰安婦の「強制性」について「女性の『人身の自由』が侵害されたこと」と唐突にまとめ主張した姿勢を自己批判。これを第三者委から「議論のすり替え」と厳しく指弾されたことにも「謙虚に受け止め」ると事実上、認めた。

「重く受け止め」繰り返す

 だが、質問の集中した慰安婦の「強制性」の有無などについての応答には、やや疑問を残した。「重く受け止める」や「実相に迫る多角的報道をしたい」など抽象的な答えの繰り返しに終わったのは残念と言わなければならない。

(12月27日付社説)