実効ある温暖化対策に向けた議論を


 地球温暖化対策を話し合う国連気候変動枠組み条約第20回締約国会議(COP20)が12月1日から南米ペルーの首都リマで開かれる。実効性ある対策の策定に向け、実のある議論を求めたい。

米中両国が前向きに

 国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が今月公表した第5次統合報告書では、現状のまま温室効果ガスの排出が続くと、今世紀末の平均気温は20世紀末ごろと比べ最大4・8度上がると予測。人類や生態系に後戻りができない影響が及ぶ可能性があると警鐘を鳴らした。国際社会は温暖化対策の強化を急ぐ必要がある。

 COP20では、2020年以降の温室ガス削減の新たな国際枠組みの構築に向け、環境整備がどれだけ進むかが焦点となろう。新枠組みは、先進国に温室ガス削減を義務付けた京都議定書に代わるもので、各国は15年末のCOP21での合意を目指している。

 削減目標に関しては「可能な国は15年3月までに提出する」ことで一致している。これまでに、欧州連合(EU)が30年までに1990年比で40%削減する方針を決定。米国は「25年までに05年比26~28%削減」、中国は「30年ごろまでに排出量をピークにする」方針をそれぞれ表明した。

 二大排出国の米中両国が、削減に前向きな姿勢を打ち出したのは、一歩前進だとは言える。しかし、果たして両国の目標は妥当なのか。

 特に、中国は30年まで排出量が増えるということだ。温暖化対策が喫緊の課題であることを考えれば、受け入れられるものではない。

 両国には、積極姿勢を示すことで今後の国際交渉で有利な立場を確保する狙いがあろう。だが、両国だけで世界の排出量の4割を占めている現実を直視すべきだ。責任の重さを自覚しなければならない。

 COP20では、各国が提出した目標の妥当性を検証する仕組みも議論される。実効性の確保に努めてほしい。

 一方、日本は東京電力福島第1原発事故以降、排出量削減につながる原子力利用の見通しが立っていない。13年のCOP19では、20年までの温室ガス削減に関し、民主党政権時代の「90年比25%削減」を撤回して「05年比3・8%減」を暫定的な目標として表明した。

 しかし、90年比では3・1%増になるため「削減目標ではなく増加目標だ」と批判されている。その後も国内での論議は進まず、COP20でも暫定目標の見直しや20年以降の目標の提示は見送る方向だ。

 日本は97年のCOP3の議長国として京都議定書採択を実現するなど、世界の温暖化対策への動きをリードしてきた。だが今のままでは、存在感が低下しかねない。

原発再稼働が必要だ

 日本は遅くともCOP21までには20年以降の削減目標を示さなければならない。

 安倍政権は安全性を確認した原発の再稼働を進める方針だ。国民に必要性を訴え、早急に再稼働を軌道に乗せられるよう全力を挙げる必要がある。

(11月29日付社説)