中国4中総会、「法治」で統制を強化するのか
中国共産党は第18期中央委員会第4回総会(4中総会)で「法に基づく国家統治(法治)」の推進を決めた。
党が法律の上に君臨
これまで中国では法律よりも指導者の意向が重要視され、「人治」への批判が国内外で強かった。「人治」よりも「法治」が重視されるのであれば、13億の国民が西側の民主主義国家並みに法の下に同等に人権を享有することになり、大きな前進として高く評価できよう。
しかし、「法治」推進の狙いは「人治国家」のイメージを払拭することであり、党が法律の上に君臨する共産党の一党独裁体制にいささかの変化もない。4中総会後に発表された約5000字のコミュニケの中では「党の指導」を意味する表現が15回も繰り返されている。
「法治」と言っても、現実には共産党が決めた枠の中で行われるにすぎないとみていいだろう。むしろ「法治」の名の下に、統制強化に向かう可能性が高いことに注目すべきだ。
習近平政権発足後、共産党への権力集中が強化され、法律は軽視されてきた。警戒しなければならないのは、体制に批判的な改革派知識人への締め付けが強まっていることだ。
インターネットで指導者を批判した81歳の知識人は「騒ぎを起こそうとした」とのいわれなき容疑で逮捕されている。また、ウイグル族の人権状況などを伝えるホームページを作った大学教師が無期懲役の判決を受けるなど、司法機関の暴走が目立っている。
一方、中国では一部の地方幹部が警察や司法も手を付けられない絶大な権限を握っている。4中総会は「裁判権と検察権を独立かつ公正に行使する制度を確保する」とし、汚職捜査などをめぐって地方幹部が裁判所・検察院に介入する現状を是正する方針を示した。
だが「法治」推進には、習氏が政敵を倒すために司法機関の権限を強化する狙いもあるとみていい。現に各地の警察や検察が党の調査機関の指揮を受け、習政権が指導している「反腐敗キャンペーン」を推進した。
その結果、元最高指導部メンバーの周永康氏が失脚し、その親族や元部下ら数百人が粛清された。4中総会では周氏に対して党籍剥奪や刑事責任追及が決定するかが焦点だったが、処分は先送りとなった。ただし、周氏の腹心ら6人が党籍剥奪の処分を受けている。
コミュニケは、行政長官の選挙制度民主化を求めるデモが続く香港について「法に基づく『一国二制度』を保障し、長期的な繁栄の安定を維持する」としている。しかし、「法律手段の運用によって中国の主権を維持する」とも表明しており、デモ隊の強制排除などが強行される恐れもある。
一党独裁継続が目的だ
われわれが改めて認識しなければならないのは、中国は共産党が全権を握る全体主義国家であることだ。従って西側世界のように三権分立による権力の相互チェックのシステムは存在しない。中国共産党が「法治」を掲げても、それは一党独裁継続のためのものであることを忘れてはならない。
(10月26日付社説)