エボラ出血熱の封じ込めへの支援加速を
エボラ出血熱の感染者が増え続けている。日本は国際社会と協力し、封じ込めへの支援を加速すべきだ。
西アフリカで感染拡大
世界保健機関(WHO)によると、エボラ熱による死者は、疑い例を含め12日までに4493人、感染者は8997人に達した。致死率は約50%だが、未申告の感染者についても考慮すれば、実際は「70%」との見解を示している。
拡大が止まらない西アフリカのギニア、リベリア、シエラレオネの3カ国で、現在は1週当たり1000人程度が新たに感染している。これも12月初めには5000~1万人に上ると予想されており、その脅威は極めて深刻だ。
また、米国では渡米後に発症したリベリア人男性の担当だった医療職員2人が感染した。スペインでも患者の看護に携わった女性が二次感染して入院するなど、欧米でも不安が広がっている。
感染拡大は世界経済にとっても新たなリスクとして浮上している。世界銀行は、西アフリカ諸国だけで経済的な損失が2014~15年の2年間に最大326億㌦(約3兆5000億円)に上る恐れがあると推計した。不安心理が蔓延(まんえん)すれば、投資や人の移動など経済活動が阻害されかねない。
アジアと欧州各国の対話促進を目的にイタリア・ミラノで開かれたアジア欧州会議(ASEM)首脳会議は、エボラ熱が「世界の保健衛生と安全保障の深刻な脅威」と警告し、協力して対策に取り組む必要性を盛り込んだ議長声明を発表した。
これに先立ち、安倍晋三首相はオバマ米大統領との電話会談で感染拡大防止へ緊密に連携することを確認した。封じ込めに向け、資金・人材面での支援を強化すべきだ。
西アフリカの国々への渡航者が少ない日本は欧米に比べ流入の可能性は低い。しかし、決して人ごとではない。国内で感染者が出た場合に備えておく必要がある。
米国で医療職員が二次感染した問題では、病院側がエボラ熱患者に対処するスタッフの訓練を行っていなかったことが分かった。職員2人のうちの一人は発症の前日に民間機に搭乗している。
リベリア人男性を最初に診察した際も、西アフリカから渡航した事実を把握していたにもかかわらず、抗生物質を与えて帰したという。日本が国内の治療体制を強化するには、こうした事例から教訓を汲み取ることも欠かせない。
職員は治療時に防護服を着ており、現在のところ感染経路は分かっていないが、医療機器の取り扱いが感染のリスクを高めたとみられる。早急な解明が求められる。
万一の場合に備えよ
一方、今年7月に最初の感染者が出たナイジェリアでは、感染者と接触した約900人を対象とした迅速な監視を徹底することで拡大を防止し、9月以降は感染の報告がない。WHOも近く、同国の流行終息を宣言する見通しだ。万一の場合、日本でもこうした対策が取れるように準備を進めておきたい。
(10月18日付社説)