安倍積極外交、果敢に安保理改革に挑め
21世紀にふさわしい国連に変えるため、日本がリーダーシップを発揮したい――。安倍晋三首相が国連改革に向けて、積極外交を展開している。訪問先のバングラデシュでは、ハシナ首相との会談で、来年10月の国連安全保障理事会の非常任理事国選挙をめぐって日本への候補一本化を決めた。安倍首相には安保理入りだけでなく、来年の創立70年に向けて安保理改革に果敢に挑んでもらいたい。
役割を果たせぬ国連
安倍首相の第2次政権発足以降の訪問国数は、今回の南西アジア2カ国歴訪で49カ国となり、歴代首相で1位だ。わが国の発言力を高め、国際貢献に積極的に取り組む「地球儀俯瞰(ふかん)外交」は大いに評価されよう。その延長線上に国連とりわけ安保理改革を見据えるべきだ。
それには来年、改選される安保理の非常任理事国に選ばれ、改革のイニシアチブをとる必要がある。非常任理事国は任期2年で、10カ国が選出され、毎年半数が改選される。バングラデシュの立候補辞退で、日本の選出が有力となった。
言うまでもなく、安保理は国際平和を維持する国連の中心組織だ。だが、シリア内戦やウクライナ紛争での無力ぶりに象徴されるように役割を十分に果たせていない。問題は創立時の旧態依然たる体制を引きずっていることだ。
常任5カ国、非常任10カ国の15カ国から成るが、5常任理事国は拒否権を持つ。「拒否権は脱退を防ぐ、国連内のガス抜き」(明石康元国連事務次長)で、これまで二百数十回も発動され、しばしば機能不全に陥った。
危惧されるのは、共産中国とロシアという「問題国家」がその一角を占めていることだ。両国は国際平和よりも覇権拡大を求める傾向が強く、自国に不利と判断すれば、拒否権を使って国際協調を乱しかねない。
とりわけアジアでは南シナ海の領有権問題など地域対立が深刻化する中で、当事者である中国が唯一の常任理事国として権限を独占している。これで安保理の本来の役割を果たせるのか、大いに疑問だ。
創立60年では当時のアナン事務総長が2005年を「国連変革の年」と位置付け積極的に取り組んだ。ハイレベル委員会を創設し、安保理改革については常任理事国を6カ国、非常任理事国を3カ国増やす案など二つの選択肢を示し、加盟国に検討を要請した。また日独など敗戦7カ国を差別的に扱う「旧敵国条項」の削除も求めた。
わが国は常任理事国入りを目指しドイツ、インド、ブラジルと4カ国グループ(G4)を結成し臨んだが、中国が反日デモを仕掛けるなど猛反対し結局、国連改革は挫折した。
それから10年を経て、「新冷戦時代」と呼ばれるほど国際緊張が高まっている。本来、国際平和に責任を持とうとする「意思と能力」を有する国が常時、安保理に参加して懸案処理に当たるべきだ。
旧敵国条項の削除を
安倍首相は慰安婦問題も含め、わが国の立場や取り組みを国際社会にアピールし、旧敵国条項の削除や安保理改革を実現してほしい。
(9月8日付社説)