防災の日、日頃からの備えが重要だ
きょうは「防災の日」。1923年9月1日は、10万5000人が犠牲となった関東大震災が起きた日である。この20年間でも阪神大震災、東日本大震災と多大な犠牲を出す大地震を経験し、国民の防災の意識は高まっている。しかしいま一度、自分の身の回りから有形無形の備えが十分かを点検したい。
首都機能移転の検討を
政府の中央防災会議が昨年暮れに公表した首都直下地震の被害想定では、今後30年間に70%の確率で発生する南関東でのマグニチュード(M)7級の地震のうち、「都心南部直下型」で、最悪1都3県で2万3000人が死亡すると試算している。
静岡・駿河湾沖から四国沖に至る「南海トラフ」では30年以内にM8~9の地震が起きる確率が70%とされ、この巨大地震については、死者が最大32万人、倒壊・焼失家屋が238万棟と被害が想定されている。
政府は「南海トラフ地震防災対策推進地域」に29都府県の707市町村、「首都直下地震緊急対策区域」に10都県の310市区町村を指定し、財政支援などを通じて建物の耐震化や津波避難対策を進めている。
また、南海トラフ地震に関して「津波避難対策特別強化地域」を指定し、高台への避難路や避難ビルの整備への国の補助率を3分の2に上げるなどして自治体に対応を促している。
国土交通省は首都直下地震に備え、火災発生時に大規模な延焼が予想される東京都などの木造住宅密集市街地について、建て替えや道路拡幅工事などによって危険地域を2020年度までに解消する計画だ。
同省はまた、南海トラフ地震の重点対策として、15年度までに紀伊半島沖の約50カ所に海底地震計を設置することで、緊急地震速報を今より数秒早めに出せるようにする。
東日本大震災で、日本人は津波の本当の恐ろしさを知らされた。大きな地震が起きたらとにかく高いところに逃げるということは、海岸地域に住む人々に浸透したと思われるが、避難経路や「災害弱者」と言われる老人や幼児の避難の手順などを確認しておきたい。
首都直下地震については、都心で国会議員や中央省庁の職員が被災し、一時的に国家運営機能が低下すること、多くの企業が本社機能を喪失し、物流機能も寸断され、95兆円の被害が出ることが想定されている。
減災対策として、首都機能や政府機能の移転をもう一度、真剣に考えるべきである。東京への一極集中は、地方の衰退や人口減少問題の一因にもなっている。減災や国家機能の維持・継続、人口問題などを念頭に国のグランドデザインを考える時に来ているのではないか。
洪水や土砂災害対策も
防災の日に各地で行われる防災訓練は、地震を想定したものがほとんどである。しかし、先月の広島の土砂災害にみられるように、これまでにない集中豪雨が頻繁に起きるようになっている。洪水や土砂災害に対しても、避難計画などをいま一度、チェックしておきたい。自然災害の多い国に住んでいるという自覚を日頃から持って備えをすることが重要だ。
(9月1日付社説)