辺野古沖調査、移設に向け着実に進めよ
防衛省沖縄防衛局は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先となる名護市辺野古沖で海底を掘削する作業に入り、地盤の強度を確認するためのボーリング調査を本格化させた。調査結果を受けて代替施設の設計を行い、早期の埋め立て開始につなげたい考えだ。移設に向け、調査を着実に進める必要がある。
反対派対策でブイ設置
ボーリング調査は当面、陸地に近い21地点を予定しており、その後、範囲を広げて60地点を調べる。政府は11月16日投開票の沖縄県知事選をにらみ、同月末には作業を終える方針だ。
知事選には現職の仲井真弘多知事が3選を目指し立候補することを表明している。政府は「5年以内の普天間の運用停止」を掲げる仲井真氏の続投が基地負担軽減につながることを示すためにも、辺野古への移設を進展させるべきだ。
日米両政府は7月、辺野古沖に臨時制限区域(約561・8㌶)を設け、沿岸から約50㍍だった立ち入り禁止区域は最大約2㌔に広がった。ボーリング調査に先立ち、反対派の妨害活動を阻止するためのブイが区域に沿って設置された。
政府が2004年にボーリング調査に着手した際は、反対派が抵抗し、調査は中断に追い込まれた。このため今回は、海保の取り締まり態勢を強化し、巡視船やゴムボートを全国から集結させた。制限区域に侵入すれば日米地位協定に伴う刑事特別法を適用し、逮捕も辞さない姿勢で臨んでいる。移設を円滑に実現する上で、当然のことだと言えよう。
普天間飛行場は住宅密集地に立地し、「世界一危険な米軍基地」と言われる。04年には、同飛行場に近い沖縄国際大学に米海兵隊のヘリコプターが墜落した。危険性の除去は喫緊の課題となっている。
日米両政府は1996年、普天間飛行場の全面返還で合意したが、辺野古移設への地元の反対が強く、特に民主党政権が「県外移設」を打ち出して以降、迷走が続いていた。仲井真知事が昨年末に辺野古沿岸部の埋め立てを承認したことで、ようやく前進することになった。
だが、知事選には県内移設に反対する翁長雄志那覇市長も出馬の意向を固めている。仮に翁長氏が勝利すれば、承認を取り消すことは困難だとしても反対派の勢いが増すことは確かだ。
反対派はブイ設置の際も小型船やカヌーを使って現場に接近して緊張を高めた。また、辺野古移設に反対する名護市の稲嶺進市長が、移設工事に必要な漁港の作業場整備を許可する可能性は低く、政府は代替措置を講じる必要に迫られている。
政府は粘り強く説明を
しかし、辺野古移設は沖縄県の基地負担軽減と在日米軍の抑止力維持を両立させるために欠かせないものだ。同県の尖閣諸島周辺では、中国公船が日本領海侵入などの挑発行為を繰り返している。
在沖縄米軍、特に即応部隊である海兵隊の戦略的重要性は今後、ますます高まろう。政府は辺野古移設の必要性を粘り強く地元に説明し続けなければならない。
(8月19日付社説)