エボラ出血熱の封じ込めに向け支援強化を


 西アフリカで感染拡大が続くエボラ出血熱による死者は1000人を超え、終息の見通しは立っていない。国際社会は封じ込めに向けた支援を強化してほしい。

懸念される流行の長期化

 エボラ熱は1976年に初めて感染者が見つかった。空気感染はせず、患者の体液などに触れない限り感染の危険はないが、発症すると発熱や頭痛、出血などの症状が出て、5~9割が死に至る。

 今回の流行は昨年12月にギニアで感染が疑われるケースが報告され、その後、リベリアとシエラレオネ、ナイジェリアに拡大した。世界保健機関(WHO)は「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言し、各国と封じ込めを図っているが、感染拡大を阻止できていない状況だ。

 13日時点で感染者は2127人、死者はのn計1145人に上っている。死者は12、13両日で76人増加し、特にリベリアでは58人増えている。

 気になるのは、WHOが感染規模を正確に把握しきれておらず、実際はより深刻な恐れがあるとの見解を示したことだ。流行の長期化が懸念される。

 また、ナイジェリアでは感染予防になるとのうわさを信じた住民が塩水を飲み、少なくとも2人が死亡した。WHOによると、誤った感染治療や予防の迷信がソーシャルメディアを通じて広がっており、この中には生命を危険にさらす恐れのある間違った情報が含まれている。

 シエラレオネでは、政府への不信感から住民が感染予防のアドバイスを受け入れないケースが多く、これが感染拡大につながったとみられる。同国東部の隔離地域では、住民が食料難に陥るなど二次的な影響も生じている。

 今回感染が広がった西アフリカの国々は、もともと医療体制が脆弱(ぜいじゃく)で、病院などの医療機関や医師、看護師が大幅に不足している。国際社会は支援や啓発を強化すべきだ。

 エボラ熱に関しては、承認されたワクチンや治療薬はない。WHOは「緊急事態」であることを考慮し、効果や安全性が確認されていない開発段階のワクチンや治療薬の投与を認める指針を発表した。

 リベリアで感染した米国人医師ら2人は、カリフォルニア州の製薬会社が試験中の新薬の投与を受け、容体が安定したとされる。ただ、薬の量は限られており、どの患者に優先的に投与するかについて基準を設ける必要がある。

 日本でエボラ熱は感染症法の「1類感染症」に指定されており、感染が確認された場合は全国47カ所の「感染症指定医療機関」に搬送される。もっとも、これまで日本で感染者が出たことはない。今回も流入の可能性は低いとみられるが、空港などでの水際対策に万全を期してほしい。

日本も一層の協力進めよ

 日本は感染予防活動を支援するために専門家を現地に派遣したほか、今月には150万㌦(約1億5000万円)の緊急無償資金協力を行うことを決めた。今後も国際社会と連携し、さらに協力を進めるべきだ。

(8月17日付社説)