2014年版防衛白書、脅威増大に国際的連携が必要


 集団的自衛権行使を一部容認した閣議決定後、初となる2014年版防衛白書が発表された。我が国周辺の軍事情勢分析、特に領土・領海をめぐる「純然たる平時でも有事でもない、いわゆるグレーゾーン事態」の増加を含め活動が活発化する中国については詳細であり、脅威の増大は瞭然である。

 中国について詳細な記述

 白書は、中国の国防費について「公表している額は、中国が実際に軍事目的に支出している額の一部に過ぎないとみられ」るとしながら、公表された14年度の国防予算8082億元(約13兆4460億円)は「過去26年間で40倍、過去10年間で約4倍」と驚異的な増額を指摘。それとともに「軍事力の強化の具体的な将来像は明確にされておらず、軍事や安全保障に関する意思決定プロセスの透明性も十分確保されていない」と述べた。

 また、東シナ海、南シナ海などでの中国の懸念される最近の動きを白書は列挙している。この中では尖閣諸島に関する「独自の主張」のほか、13年5月に「中国共産党機関紙が、『歴史的に未決である琉球問題も、再度議論すべき時が到来したと言える』など、沖縄がわが国の一部であることについて疑義を呈するが如き内容が含まれる記事を掲載した」ことを指摘した。

 意思も予算も不透明な超軍拡を続け、尖閣諸島を含む我が国の領土に野心を向けた言論を機関紙で展開したことを看過せず明記した。11年から今年6月まで中国公船の尖閣諸島周辺への領海侵入は91回、航空自衛隊の緊急発進も冷戦後に減じたものの過去10年ほど増加の一途を辿(たど)っており、一昨年が567回、昨年が810回、その過半が中国機に対するものとなっている。

 白書は、中国が我が国領空を含む東シナ海上空に防空識別圏を一方的に設定したことについて「公海上空における飛行の自由の原則を不当に侵害する」と批判して撤回を求めているが、当然のことだ。また、北朝鮮のミサイル開発については種類ごとの名称を挙げて性能を分析、射程距離を図示するなど、不測の事態に警鐘を鳴らした。

 しかし、これらへの我が国の対処は乏しい。我が国の今年度の防衛予算は4兆8848億円で10年前の0・98倍と低下している。この中で、侵略事態への対処、緊急発進、島嶼防衛、ミサイル防衛などの対処を取るとしても、その規模は増大する脅威に対して小さいと言わざるを得ない。

 このため日米同盟が重要であり、白書も日米安保体制の役割を強調する。これを深化させる武力行使新3要件で憲法上「許容される武力行使」が「国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合がある」が、「国際法上の根拠と憲法解釈は区別して理解する必要がある」と説明した。

安倍政権の政策は不可欠

 中国を国際法秩序に従わせるには米国など諸国との外交および安全保障上の連携が不可欠だ。その他、白書に盛り込まれた国家安全保障会議の創設、特定秘密保護法、防衛装備移転三原則など新たな防衛政策は、我が国が国際的連携による抑止力を働かせる上で必要であることを浮き彫りにしている。

(8月7日付社説)