政務活動費を徹底調査の上で県議は辞職を
地方議員に支給される政務活動費が適正に使用されているのか、1日に行われた兵庫県議会・野々村竜太郎議員のマスコミの批判をかわすかのような“号泣”記者会見によって疑惑が浮上している。
国会に比べ注目されない地方議会議員の資金問題への監視を強める必要がある。
政治倫理に悖る“号泣”
兵庫県議会は7日に主要会派による代表者会議を開き、野々村県議に支出を要した政務活動について説明責任を果たすように求めるとともに、それができないならば政務活動費返還および速やかな議員辞職をするように勧告した。当然であろう。
野々村県議に関しては記者会見を異様にして説明責任を果たさなかったことも政治倫理に悖(もと)っており、資質が疑われる。
収支報告書で問題とされる内容は不自然この上ない。昨年度、東京、博多、兵庫県豊岡市の城崎温泉などに日帰りで195回出張し、領収書なしで交通費約300万円を政務活動費から支出した。
県議が1年の半分以上も日帰り出張するなど、到底あり得ないことだ。兵庫県議選で西宮市から選出された野々村県議は、2011年度から3年間で同様な出張費として少なくとも800万円を使ったという。常識的に不可能な出張を繰り返した内容の収支報告から、常習的な架空報告の疑いが濃厚であり、税金を議員が着服した疑惑が持たれている。
このような不自然な収支報告が11年度、12年度と通り、13年度に関してようやく問題にされたことも驚くべきことだ。野々村県議の資質が問われるばかりでなく、収支報告が素通りとなっていた監視の甘さも批判されるべきである。県政界の体質問題ではないのか。
政務活動費は地方自治法で定められる議員の経費で、その額は各地方自治体が条例で定める。総額を支給して残金は返還するが、最も高いのは東京都議会の議員1人月60万円。阪神地方の大都市圏を抱える兵庫県議会も月50万円と高い方だ。あらかじめ総額支給される仕組みによって議員報酬化する向きもあり、公私混同の問題が過去にも指摘されてきた。
が、政務活動費が総額支給の形をとるのは、政治家として議員に選出される人物には品格が備わっていることを大前提にしているためだろう。
ところが、使途の透明化を図る目的で収支報告書を提出するものの、その内容が形骸化を通り越して虚偽のものとなったと思われるのは極めて遺憾なことだ。他の地方議会でも問題はないか検証する必要がある。
野々村県議は選出当時、「西宮維新の会」を名乗り、大阪府・市における「大阪維新の会」の人気に便乗したが、有権者もブームに流されたことを教訓とすべきだ。
勧告に従わねば除名も
野々村県議は演技としか思えない“号泣”会見で説明責任を果たしていないのであり、今後県議会の勧告に従うべきだ。また県議会側も万一の場合には、地方自治法が定める議員除名の手続きを踏むべき不祥事と認識してほしい。
(7月10日付社説)