ニホンウナギを絶滅危惧種指定、食文化守るため英知結集を
日本人の食になじみ深いニホンウナギについて、国際自然保護連合(IUCN)は、絶滅の恐れがある生物を対象とした「レッドリスト」の最新版に掲載し、絶滅危惧種に指定した。
絶滅危惧種に指定される
IUCNの判断は、三つある絶滅危惧種指定のうち、深刻度が2番目の「近い将来における野生での絶滅の危険性が高い種」。理由として、生息環境の喪失や乱獲などを挙げている。
ウナギは日本人には古くから親しまれてきた食材だ。かば焼きに使われるニホンウナギは現在、日本国内外で捕獲した稚魚のシラスウナギを養殖したものが大半。しかし、1960年代には年間200㌧超だった漁獲量は、昨年には約5㌧にまで激減した。
今年は比較的好漁だが、水産庁は「直ちに資源量が回復したと判断するべきではない」としている。環境省はすでに昨年、ニホンウナギを絶滅危惧種に指定している。
IUCNの判断には法的拘束力はなく、絶滅危惧種に指定されても即座に消費や取引が規制されることはない。とはいえ、絶滅の恐れがある野生動植物の取引を規制するワシントン条約の対象を決める際の有力な科学的根拠となる。
昨年3月のワシントン条約締約国会議では、米国が検討していたウナギの国際取引規制案の提起は見送られた。だが、資源回復が進まなければ次回の会議で出てくる可能性は高まる。
日本は、世界で生産されるウナギ類の約7割を消費する。深刻な状況を打開するために、まずは資源管理の徹底が求められよう。
水産庁はニホンウナギの年間養殖量について、過去3年の平均値を上限に規制する方向で検討している。捕獲や養殖を行う中国、韓国、台湾などとの共通ルール化を目指し、本格的な調整に入る。政府レベルで合意が得られれば、養殖業者ら民間の自主規制ルールとして具体化を図る方向だ。
もっともウナギの生態はまだ解明途上で、資源量回復に向けた妙案は見当たらないのが実情だ。食文化を守るために、英知を結集する必要がある。
安定的に供給するには、天然の稚魚に頼らず、養殖の親魚から採取した卵からシラスウナギを育てる「完全養殖」による量産が欠かせない。ただシラスウナギは水の汚れに弱く、現在は餌を与えた後、スポイトを使って稚魚を別の水槽に移すなどして年間数百匹を研究室で育てている段階だ。
水産庁は民間企業が持つ濾過技術を導入し水を自動的に浄化する方法などを研究。年間1万匹のシラスウナギを生産できる技術の確立を目指しているが、実用化のめどは立っていない。生態解明を進め、技術開発を加速する必要がある。
資源回復に全力挙げよ
ウナギは成長過程で雄雌が決まるが、養殖ではほとんどが雄になるという。資源の保護に向けて、愛知県水産試験場は雌を生み出すための技術開発に乗り出した。
さまざまな取り組みを進め、資源回復に向けて全力を挙げてほしい。
(6月20日付け社説)