米無人機配備、中朝への抑止効果を期待


 米軍の無人偵察機が、青森県の三沢基地に初めて一時配備された。中国や北朝鮮を念頭に日本を拠点とした偵察活動を強化する。自衛隊も無人機の運用に乗り出そうとしている。

防衛省も来年度に導入

 日本に一時配備された米軍の大型無人偵察機「グローバルホーク」はグアムのアンダーセン基地で運用される3機のうちの2機。グアムは5月から10月頃は台風に見舞われることが多く、日本への配備により、年間を通した運用効率を高め、情報収集力の向上につなげる狙いがある。米軍は週2回程度の飛行を予定している。

 グローバルホークは主翼幅約40㍍、全長14・5㍍で攻撃能力はない。30時間以上の連続飛行ができ、米西海岸からオーストラリアまでノンストップ飛行の記録がある。

 最高高度1万8000㍍からの画像情報や電子情報収集が可能。三沢基地内の地上設備でパイロットが操縦し、一定高度以上になると、米カリフォルニア州のビール空軍基地から衛星通信を通じて遠隔操作を行う。東日本大震災発生の翌日には福島第1原発上空を偵察し、日本政府に解析度の高い写真・映像を提供した記憶は新しい。

 三沢基地を拠点に日本周辺の情報収集活動、とりわけ北朝鮮の弾道ミサイル発射への動きや、沖縄県・尖閣諸島周辺の中国の航空機や艦艇を監視する能力の向上が期待される。北朝鮮や中国には三沢の方がグアムより近く、三沢配備は両国を牽制(けんせい)することになろう。

 防衛省はグローバルホークの導入に向け、来年度予算案に購入費を盛り込む方針である。導入後、収集した情報を米軍と共有する。偵察活動における米軍との役割分担によって抑止力が向上しよう。

 公表されているだけでも、世界11カ国が約800機の無人偵察機や無人攻撃機を保有。そのうち8割以上を米国が占め、無人機の世界規模の展開を加速している。

 米国はすでにアフガニスタンやパキスタンでのテロとの戦いで無人機を活用している。また、ナイジェリアのイスラム過激組織ボコ・ハラムが誘拐した200人以上の女生徒の捜索を支援するため、米兵が隣国チャドに派遣され、ナイジェリア北部上空で無人機の運用が始まっている。

 欧州ではドイツ、フランス、イタリアなどが次世代無人機の共同開発に向けて歩調を合わせつつある。2011年のリビア空爆、今年のマリ軍事介入などで米国に比べ開発が遅れ、偵察能力の不足が明らかになったことも開発促進の要因である。

 第1次、第2次世界大戦を経て、航空機技術の進歩は軍事、民事を問わず想像を絶する速さであった。その航空機が無人機開発の時代に入った。さまざまな分野で無人機が能力を発揮する可能性が論じられている。

中朝機への備えも早急に

 一方、昨年9月には尖閣周辺を中国の無人機が初めて飛び交い、最近では北朝鮮が飛ばしたとみられる無人機が相次いで韓国で発見された。

 中朝の無人機への備えも早急に求められる。

(6月5日付社説)