原発の再稼働へ粘り強い努力続けよ
東京電力は先月末、柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働に向け、安全審査を原子力規制委員会に申請した。難色を示していた新潟県の泉田裕彦知事に東電が歩み寄ったことによるものだ。
東電は来春の再稼働を目指しているが、越えなければならないハードルは多い。今後とも粘り強く努力を重ねてほしい。
「沸騰水型」初の安全審査
福島第1原発事故の教訓を踏まえて、世界で最も厳しい新規制基準が設定された。これは将来起きる可能性のある大地震を想定して定められた。原発の最高度の安全を目指したものであり、後ろ向きにのみ捉えるべきではない。ここから安全文化の再構築が始まる。
新規制基準に基づき、再稼働に向けて7月に始まった安全審査は、既に北海道、関西、四国、九州の4電力が6原発12基を申請している。柏崎刈羽原発は、7月には間に合わず、その後準備を進め、申請を決めたが、泉田知事が地元に説明する前に方針を決めたとして反発。東電が「安全協定」を遵守し、地元との協議を継続していくなど、大幅に歩み寄ることで、了解をとりつけた。
柏崎刈羽原発の安全審査申請は「沸騰水型」としては初めてであり、経営主体が東電であることからも、原発再稼働への動きの中でも重要な意味を持っている。
国内の原発で唯一稼働していた関西電力大飯原発4号機が先月、定期点検のために停止し、現在国内で稼働する原発はゼロだ。原発の停止による不足電力は、主に火力によって賄われているが、その燃料費が日本経済に大きな負担となっている。
東電の経営計画に盛り込まれている柏崎刈羽原発の再稼働が実現しなければ、電気料金の再値上げは避けられない。これ以上の値上げは、家計や企業経営に大きな負担となる。ようやく上向いてきた景気にも水を差しかねない。
とはいえ、拙速な再稼働は慎むべきだ。安全性の確保や地元の理解を得ることに十分配慮すべきである。
再稼働実現に向け、まずクリアしなければならないのが安全審査である。柏崎刈羽の周辺は地震が多い地域である。耐震性の高さが要求されるのは当然だろう。断層の評価も注意深く見守っていく必要がある。
安全審査をクリアした後は、新潟県、柏崎市、刈羽村の3自治体が再稼働を了承するかどうかが問題だ。
泉田知事は、東電の安全審査申請を認めるに当たって、審査を通っても、引き続き地元自治体との協議を求め、東電は規制委の承認だけで再稼働しないことを約束した。
住民の意向を重視する知事の姿勢は理解できる。しかし、専門の科学者が世界で最も厳しい審査を行うことの重みはどうなるのかという疑問が残る。規制委がゴーサインを出した後は、住民が理性的な判断をできるように説得するのが首長の役割ではないのか。
地元との話し合いを
原発の再稼働を円滑に進めるため、東電は安全審査が行われている間も、地元との話し合いや説明を行うべきである。
(10月3日付社説)