日米首脳会談での意義大きい尖閣防衛明言


 安倍晋三首相とオバマ米大統領は東京・元赤坂の迎賓館で首脳会談を行い、中国の「力による現状変更」に明確に反対することで一致した。

 オバマ大統領は共同会見で、中国が周辺海域で威圧的行動を続ける沖縄県・尖閣諸島について「(米国の日本防衛義務を定めた)日米安全保障条約第5条の適用対象だ」と明言した。オバマ大統領が尖閣への安保条約適用に言及したのは今回が初めてで、その意義は極めて大きい。

 同盟は地域の平和に貢献

 この背景にあるのは、欧州における米国の威信の低下である。ロシアによるウクライナ南部のクリミア半島併合に対し、米国は何もできなかった。

 欧州の同盟諸国から不満が噴出し、“米国弱し”とか孤立主義などの印象が広がり、中国に付け入る隙を与えるのではないかと危惧されていた。脅威を増している中国を牽制(けんせい)したことを歓迎したい。

 米経済界は中国市場を重視しており、オバマ大統領はこれまで中国を刺激するような発言をなるべく避けてきた。だが、中国に及び腰のままでは同盟国である日韓両国の米国への信頼が揺らぎかねない。

 オバマ大統領が中国の反発を買うことを承知の上で尖閣への安保条約適用を明言したのは、対中戦略で日本の協力が不可欠と踏んでいるからであろう。

 安倍首相は集団的自衛権の行使容認に向けた検討状況を説明し、オバマ大統領から「歓迎し支持する」との立場が示された。首相はこれを追い風に、憲法解釈見直しへ政府・与党内の調整・説得を加速してほしい。

 両首脳が日米同盟の役割について「アジア太平洋地域の平和と繁栄に貢献する」と位置付け、同盟のさらなる強化策を打ち出すことで一致したのも成果だ。安倍首相は「日米同盟は力強く復活した」と述べたが、同盟強化のために両国がやるべきことは多い。年内に再改定が予定されている日米防衛協力のための指針(ガイドライン)をはじめ、サイバーや宇宙空間など幅広い分野での防衛協力の拡大など課題が山積している。

 北朝鮮による日本人拉致問題に関して、安倍首相は理解と協力を要請し、オバマ大統領から支持の表明を受けた。米国の協力によって解決に向かうことを期待したい。

 オバマ大統領は首脳会談後、横田めぐみさんの両親ら拉致被害者家族に面会して「人の親として、拉致問題は本当に許せない」と語った。

 対北朝鮮政策では日米韓の連携強化が必要だ。日韓関係は冷え込んでいるが、3月に日米韓首脳会談が開かれたほか、先日は米国で3カ国の防衛当局の高官協議が行われるなど、米国の仲介で打開を模索する動きが出てきた。

 日本との連携を拒んできた韓国も、歴史問題とは切り離し、核、ミサイル開発をやめない北朝鮮に結束して対処する姿勢に転じつつあると言える。

 対北抑止へ韓国と連携を

 北朝鮮が暴挙に出た場合、最前線で対応するのは在日、在韓米軍だ。対北抑止力向上に向けて日米韓の一層の取り組みが求められる。

(4月25日付社説)