予断なく鳥インフルエンザの防疫体制整えよ


 熊本県多良木町の養鶏場で、高病原性鳥インフルエンザが確認され、現場と、その関連の相良村の養鶏場で約11万2000羽の鶏を殺処分した。

 今後、新たな感染がなければ、同県は半径3㌔圏内の鶏や卵の移動制限を5月8日に解除する方針だ。国とともに感染拡大防止のため抜かりない防疫対策を徹底すべきだ。

 迅速だった初動対応

 今回、多くの鶏が死んだとの報告で遺伝子検査を行った結果、高病原性H5型ウイルスが検出された。これを受け熊本県は発生した養鶏場から半径3㌔以内で飼育されている鳥の移動を禁止し、半径10㌔圏から外への鶏肉と卵の出荷を停止させた。また近隣養鶏場の消毒をはじめ、周辺の主要道路に消毒ポイントを設置した。初動対応は迅速だったと言える。

 きのうの防疫措置の終了に伴い、10日後に二つの養鶏場で清浄性確認検査が行われるが、その間も現場周辺での防疫作業で油断のないよう求めたい。検査で陰性が確認されれば、半径10㌔圏内の鶏や卵の出荷制限が解除される。

 周辺の大分県や宮崎県の養鶏団体なども不安を隠せないが、情報を共有し道路の消毒などを重点的に行うべきだ。

 林芳正農林水産相は、監視体制の強化や感染予防策を確実に実行するよう、全都道府県に対して要請。既に農水省は、今冬の韓国での鳥インフルエンザ流行を受けて、1月と2月に感染防止策の徹底を都道府県に求めており今回、改めて注意喚起した。過去の例からも分かるように、発生地点に偏りはなく予断は許されない。

 今のところ感染経路は不明だが、韓国から渡り鳥がウイルスを持ち込んだ可能性がある。鳥インフルエンザは2010年11月~11年3月に島根、千葉、南九州などで発生し、約183万羽が殺処分された。

 過去の感染拡大を踏まえ、熊本県などの畜産農家でも、野鳥の侵入防止や鶏舎の定期的な消毒などを励行していた。ただ人や小動物が養鶏場にウイルスを持ち込む場合もあり、野鳥対策だけでは限界がある。防疫措置についての検討が必要だ。

 鳥インフルエンザは近年世界各地で発生し、わが国の養鶏場でも04年以降頻繁に感染が確認されている。発生農場のみならず養鶏産業全体においても多大な被害が生じ、社会的混乱も小さくない。

 さらに今回見つかったH5型の一つH5N1ウイルスは、鳥の間だけでなく、鳥から人への感染も報告されている。世界保健機関(WHO)によると03年以降、世界で664件の人への感染、391人の死亡が報告されている。中国では昨年からH7N9型に感染する人が増えている。

 ウイルスが変異し、人の間で感染が広がる新型インフルエンザになった場合、世界的大流行につながる恐れがある。

 公衆衛生にも注意を

 厚生労働省によると、国内では通常の生活の中で感染する可能性は極めて低い。しかし人や動物、モノの動きが格段に増えた現代社会では公衆衛生に注意が必要だ。

(4月17日付社説)