オウム判決、活動への監視強化が不可欠


 オウム真理教による仮谷清志さん拉致事件の逮捕監禁罪などに問われた元幹部平田信被告の裁判員裁判で、東京地裁は懲役9年の判決を言い渡した。

 しかしオウム真理教は今でも存続し、元代表の松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚を崇める動きもあるとされる。監視の強化が不可欠だ。

裁判員による初の判決

 地下鉄サリン事件など一連のオウム事件で、裁判員による判決は今回が初めてだった。事件が一般国民の視点で裁かれた意義は大きい。

 仮谷さん事件について判決は「平田被告に事前に計画を説明した」とする中村昇受刑者の証言の信用性が高いと判断。「家族に監禁された信者を救出しに行くと思った」とする平田被告の主張は「不自然で信用できない」と認めず、幇助にとどまるとする弁護側主張を退けた。マンション爆弾事件に関しても、無罪主張を認めなかった。

 その上で「教団の独善的な思考に基づき、多数の信者が役割分担して計画的に行われた犯行」と指摘。約17年の逃亡を「刑事司法や社会に与えた影響は軽視できない」と批判し、2011年末に出頭したことも「遅きに失した感が否めない」と評した。オウム事件に対する国民の怒りを反映したものと言えよう。

 オウム裁判では松本死刑囚ら13人の死刑判決と5人の無期懲役判決が確定している。今回は元幹部の井上嘉浩、中川智正、林泰男各死刑囚が証人として出廷したことも注目を集めた。

 オウム真理教はポア(悪行をなすものを転生させる)の教義で殺人を正当化し、次々と事件を引き起こした。一連の事件による死者は29人、負傷者は6000人以上に上る。特に地下鉄サリン事件は猛毒を用いた無差別テロであり、日本国内だけでなく海外も震撼させた。言語道断の凶悪犯罪だ。

 現在、オウム真理教は主流派「アレフ」と反主流派「ひかりの輪」に分かれて活動を続けている。心配されるのは、一連の事件を知らない若者が勧誘のターゲットにされていることだ。信者全体に占める20歳代の割合が大幅に増えている。

 公安調査庁は二つの団体を団体規制法に基づく観察処分の対象としている。同庁によると、13年6月末時点の国内信徒は二つの団体を合わせて約1650人に上り、11年11月末から約150人増えた。

 勧誘の際には、一連の事件を「国家によるでっちあげ」などと説明し、最終的には殺人を肯定するという。事件を正当化するような姿勢は到底許されるものではない。特に若い世代への啓発を進めるなど事件を風化させない取り組みが必要だ。

当局は治安維持に全力を

 オウム真理教に関して、海外では入国はもとより、組織的活動を完全に禁止している。本来は破壊活動防止法を適用して教団を解散させ、活動を完全に封じ込めなければならない。

 最近は松本死刑囚の写真を堂々と掲げるなど、当局との対決姿勢を強めているとされる。危険な兆候が見られる以上、当局は監視を徹底し治安の維持に全力を挙げるべきだ。

(3月9日付社説)